5度目のG3制覇は番手から
単騎が4人もいる決勝。波乱の余地もあったが、フタを開けてみれば吉田茂生ががつくり出したハイペースに単騎勢は置いていかれ、人気を分けた柴崎淳と野田源一、2人のゴール勝負に持ち込まれた。番手まくりで合わせ切ったはずの野田が、直線で再び詰め寄る。が、優勝を確信できるだけの着差で、柴崎が野田を退けた。
「前回(岸和田)、踏み負けているんで、そういう思いもあってなんとか勝ちたかった。最後の残り半周、脚じゃなくて気持ちだけでした。(野田には)絶対に負けたくなかった」
直前の岸和田F1シリーズ。そこでも吉田とタッグを組んだ決勝は、野田のまくりに沈められ、辛酸をなめる3着に沈んでいた。野田はその岸和田からの連勝を5まで伸ばして、今シリーズも無傷の優出。F1からG3にグレードを上げて、直後のシリーズで巡ってきたリベンジのチャンス。スマートな印象の柴崎は、珍しく気持ちを前面に出した。
「今日みたいに中部の後輩が頑張ってくれて、自分が(番手から)出る形でのグレード(を優勝するの)は初めてなんで、うれしかったですね。僕も若い時は果敢にいってんで、それが生きたのかなと。(吉田は)頼もしかったし、そのためにもなんとか1着を取らないとっていう思いだった」
通算5度目のG3優勝。過去の4回はすべて中部ラインの先頭で優勝をもぎ取っていたが、5度目は後輩がチャンスメイク。吉田の思いを無にするわけにはいかなかった。
「階段を1つずつのぼっていって、G2、G1だと思う。そこ(G1優勝)は変わらないですね」
昨年9月の共同通信社杯で落車に見舞われて、腰椎骨折の大怪我を負った。3カ月以上のブランクを余儀なくされ、12月の平塚グランプリシリーズで復帰。そこからおよそ半年、一昨年11月以来となるG3優勝も柴崎にとっては通過点でしかない。
「G1(優勝)ですね、その時こそ、自分をほめたい」
タイトルを手にするその時まで、感慨にひたる時間はしばらく取っておこう。
スタートで飛び出した野田源一は、前受けから中近3車に出られて4番手をキープ。最終2コーナー手前から好スピードで迫ったが、柴崎をとらえるまでには至らず、初のグレース優勝を手中にすることはかなわなかった。
「(中近ラインのところで)粘ろうと思ってたんですけど、気づいた時には遅かった。3車出切られた。そのあとも吉田は早めに行ってるから、どこかで緩むかと思った。でも、緩まなかったですね。それでもいい位置からまくれているんで、(優勝できなかったのは)力不足。また、チャレンジします」
番手まくりの柴崎の加速力に、地元の鷲田佳史はわずかに遅れる。野田が柴崎を追いかけ、直線で鷲田とからんだ合志正臣は、なんとか3着に入った。
「(野田のまくりは)結構、いいスピードだったけど、(柴崎)淳はあれを合わせるんだから。(連日セッティングの調整をして、最終日の)今日が一番最悪だった。結果的には初日が一番良かったかな。来期からがS1なんで、そこからがまた勝負です」