太田竜馬が2度目の地元記念制覇
「(地元記念は)年々、緊張が増してくる。みんなの思い、地元記念の大切さがわかってきた」
初めて地元記念を獲った19年は、G3のVラッシュ。地元を含めて高知、岐阜、佐世保と4度のG3優勝を飾った。「あの時はまだよくわかってなくて、目の前の一戦、一戦を頑張ってるだけだった」。それから多くの時間が流れたわけではないが、中四国地区の盛り上がりとともに、太田竜馬が背負うものも大きくなっていった。
「地元記念優勝は、体からしみ出るくらいうれしい。うれしさでいっぱいです」
2度目の地元記念Vをこう振り返った太田。中四国勢が大挙5人も決勝に進んで、町田太我との別線を選択した。レースは赤板前から太田が町田にフタをする形で、両者の駆け引きが始まった。先に切って出た太田に、8番手で態勢を整えた町田がフルダッシュで襲い掛かる。太田は町田ラインを受けて3番手に入った。
「(周回中は)どっちかというと後ろが良かったけど。あとは流れのなかで、その場の判断でと思ってた。そしたら町田君がめちゃめちゃいいスピードで来た。あんなスピードは自分も初めて。(飛び付くのも)キツくて、まくれないと思った」
絶好の展開かに思われたが、真っ向勝負の町田がスピードに乗せて風を切る。車間がなかなか詰まらなかった太田のまくりの背中を押したのは、同県の先輩たちだった。
「キツかったけど、(まくりに)行ったれと思った。それで自分が止まったら後ろの人たちに獲ってもらえればって。それで無理やり行った」
逃げる町田を気迫でとらえ、あとは地元3人の勝負。3番手から中のコースを伸びた小倉竜二を1輪退けて、先頭でゴールを駆け抜けた。敢闘門に引き揚げた太田に「オマエの完封や。力勝負で獲って良かったな。もっと積極的にいったらSSになれるわ」と、小倉が称えた。
「自力で獲った方が自信になる。いずれは(町田とラインを)組むことがあると思うけど、まだまだ人の後ろを付くっていうのは」
ガツガツしていないのがいいところでもあり、先輩たちにとってはもどかしい部分でもある。太田の“覚醒”が徳島勢の今後の大きなキーとなるのは、自他ともに認識していることだろう。
「(良くなっている)手応えは確実にある。ただ、まだかみ合ってないなかで獲れたんで、かみ合えばもっともっとイケる。難しいけど、負けパターンがないように。苦手なものをつくらないように、その作業の途中です」
小倉に次ぐ徳島からのタイトルホルダー。その一番手に太田がいるのは間違いない。
最終4コーナーで番手の小川真太郎が外に膨れると、小倉竜二は太田と小川の間を踏んで2着に伸びた。
「直線まで待ってから踏み込もうと思ってた。あとは小川君が伸びてくれたら惰性をもらおうとしたら、太田君が強すぎた。小川君も付きバテしたのかと。太田君は気持ちも入ってた」
番手でVチャンスが訪れた小川真太郎だったが、直線で伸びを欠いた。
「太田のレースは完ぺき。付いたなかで一番強かった。勝負どころでスライスしてしまった。自分が一番弱かった」
思惑通りの展開に持ち込みながら太田にまくられた町田太我は、新鋭らしいレースで存在感をアピールしたものの、悔しさあらわにする。
「展開としては自分の理想の形だった。自分の力がなかっただけです。(太田が)すぐに来るんじゃないかとペースが乱れてしまった。自分が思ったように駆けられなかった」