宿口陽一がG3初制覇
山田諒をとらえて先頭でゴールを通過した宿口陽一に、阿部大樹、武藤龍生、同県の後輩たちが肩を叩いて祝福する。ウイニングランの1周、ホーム手前で宿口が右の拳を突き上げてファンに応えた。
「高松宮記念杯の時は達成感がなかったけど、今回は後輩2人に任されて、2人も喜んでくれてうれしかった。後輩2人に感謝しかない」
S級でF1を6度の優勝しかなかった宿口が、6月の高松宮記念杯でアッと驚くタイトル奪取。G2、3を飛び越えてのタイトル制覇には、同県をはじめ関東勢の多くの仲間が喜んだ。その宿口が、後輩への感謝を口にして汗をぬぐった。
寬仁親王牌を直前に控えた今シリーズは、S級S班は当然ながら不在。自身にかかる重圧も小さくはなかった。地元、関東地区での開催で、4日間のシリーズをけん引した。
「ずっと(4日間メインの)12レースを任されていて緊張感もあった。昨日(準決)は地元勢に任されていて決まらなかったけど、出し切れたんで動き自体は良かったと思う。自分のなかではいい開催だった」
同県の後輩2人に託された決勝は、単騎の3人がいる山田との実質2分戦。人気を背負ったが、たやすいメンバー構成ではなかった。
「(山田と自分の)3対3対に単騎3人でやりづらいレースだった。3人が力を合わせて勝てたのでうれしいです。伊藤(成紀)さんの動きもある程度想定していたし、対応はできたけど、山田君も強かった」
単騎の伊藤が大ガマシを打って、番手から追いかける山田に流れが向いた。が、最後は宿口がねじ伏せてG3初制覇を遂げた。
「このあとは競輪祭に向けて調整して、グランプリに向けて過ごしていきたい。自分にできることをして、12月を迎えられたらと思います」
自力でのG3制覇。宿口にとっては、1つの通過点だが、11月の競輪祭、そして年末の大一番に向けて自信になったことは間違いない。
打鐘で単騎の伊藤のカマシを受けた山田諒は、車間を空けて番手でタイミングを計る。詰める勢いで宿口を合わせたかに見えたが、宿口の底力に屈した。
「悔しいですね。本当それだけですね。(最終)ホームで車間が空いて詰める勢いでいけたんですけど、宿口さんが一枚上でした。自分にとっては最高の展開になったので、これで勝てないのは力負けですね」
埼玉ワンツーこそならなかったが、3着の阿部大樹は宿口をたたえてシリーズを振り返る。
「伊藤さんが行くのも想定していたけど、結果的に苦しい展開になってしまった。自分は(宿口に)付いていくことだけに集中していました。(最終)3コーナー過ぎからコースを探したけど、結果的に付いていって良かった。今シリーズは自力も出せたし、自転車も良かった。平原(康多)さんに外々を踏んで来いと言われていたので、それができた。ただ、陽一さんの後ろに付いていて、力の差を感じました」