新S班がV奪取
立川の長い直線が吉田拓矢に微笑んだ。最終4コーナーでは前をいく浅井康太、新田祐大のマッチレースかに思われたが、2センターでようやく外に持ち出した吉田が、2人に並んだところがゴール。外を突き抜けた吉田にとっては、浅井と新田が接触してわずかにスピードが鈍ったことも味方した。
「ちょっと厳しいかなと思ったんですけど、僕だけ脚を使ってなかったんで最後伸びました。浅井さんと新田さんがからんだおかげで抜けた。ツキがあった」
昨年の競輪祭でタイトルホルダーの仲間入り果たして、今年は平原康多、宿口陽一ともにS級S班として関東を背負う立場だった。今シリーズは平原とともにシリーズをスタートさせたが、二次予選で平原が落車に見舞われて、その重責は新Sの吉田に重くのしかかった。
「2日目に平原さんが落車で欠場になってしまった。なんとしても関東、地元地区で優勝者を出したいっていう思いだったので、勝てて良かった」
レースは大方の予想通り、北日本勢が主導権。が、前受けから木村弘が清水裕友を突っ張ると、清水は番手の新田と併走になり木村後位がもつれた。中団にいた吉田は、新田が清水を大きく張った最終1センター過ぎからかぶって出られない。その間に後方の浅井がまくりで前団に迫り、最悪の流れだった。
「(浅井がまくった)あそこで(自分も)行くべきだった。行くところを逃しました。前も膨れていて、内に吸い込まれる感じでした」
浅井、桐山敬太郎を追うように稲村好将が外を踏んで、最終バックでも吉田は出られない。稲村の通過を待って、やっとのことで吉田は踏み込んだ。
「(S級S班のスタートとしては)デキすぎですね。慢心せず次の大宮でも頑張りたい。(今年の年末も)またグランプリの舞台に戻ってこられるように」
S級S班として内容はもちろんだが、地元地区で結果を残さなくてはならなかった吉田がつかんだ新年のV。2月の地元、取手での全日本選抜に向けて、これ以上ない22年のスタートになった。
浅井康太は、吉田を前に見る8番手で最終ホームを通過。1コーナーから踏み上げて、番手死守から前に踏んだ新田の後ろに入る。ゴール前では粘り込む新田を交わしたが、8分の1輪、その外を吉田に行かれた。
「前でやり合ってたので、吉田君よりも先に仕掛けようっていう気持ちがありました。出が悪くて、新田君の動きを見ながらになりました。(新田を交わしたのが)ギリギリだったので、あれを(まくって)いったら合わされていたかなと。(今シリーズは)4日間しっかり競輪ができたし、これからもお客さんに競輪を楽しんでもらえるようにしっかりと」
木村の番手で清水と併走になった新田祐大は、最終1センターで外の清水を仕留めて競り勝つ。番手を守り、浅井に合わせてまくる大立ち回りを演じた。
「清水君はヨコもさばけるし、前にも踏める。弱い選手じゃないので、さばくのに1周かかってしまった。清水君じゃなくても、誰もがそこを狙うかなっていうのがあった。そういう面では違う面を見せられたんじゃないかと。負けてしまったけど、すごく収穫のあるレースだった」