300勝のメモリアルV
過度の疲労からくる腸骨の骨折により、およそ4カ月の戦線離脱を余儀なくされていた。復帰後は自身も満足がいかない中で勝ち星を量産。圧巻のパフォーマンスを見せていたが、ここまでの3場所は、大宮F1の優勝のみ。2月の奈良記念、前回のウィナーズカップはともに、中四国勢の2段駆けに屈していた。三度目の正直。それだけに脇本雄太も、思うところがあっただろう。
「(先行した山根将太は)まくりに構えようかっていうスピードだった。迷いどころだった。けど、まくりに構えると、二の舞、三の舞になる。後悔するくらいなら行きたいなって」
奈良では8番手、ウィナーズカップでは、7番手に置かれて見せ場なく敗れていた。そのシーンを拭い去るように、脇本が打鐘の3コーナー過ぎから目いっぱい踏み込んだ。
「正直、出切れるとは思ってなかった。それくらいリスクのある仕掛けだったし、紙一重だった。自分のなかではギリギリでした」
最終ホームで逃げる山根を視界にとらえると、けん制して番手から発進した松浦悠士を驚異の加速力でのみ込む。付けた佐藤慎太郎がバックで遅れて、松浦でさえ1車身差で流れ込むのがやっとだった。
「次の(大きいレースの)ダービーにつながるレースがしっかりとできたかなと。この感触を忘れずに。多少、得られたものもあったし、これに満足をせずに上積みをって思ってます」
通算9回目のG3制覇で、08年7月のデビューから区切りの通算300勝を飾った。
「(同じく300勝にリーチをかけていた松浦と)300勝対決っていう変な意識はあったけど、レースに入ったら感じなかった。達成できたけど、今後も油断をしないで。(300個の勝利は)1勝、1勝が得られたものです」
5度にわたりタイトルを獲得。33歳になったばかりの脇本にとっては、300勝も通過点でしかない。次元の違う走りのその先に。脇本だけが見える世界がある。
最終1コーナーで外にけん制した松浦悠士は、2コーナーから番手まくりに出たが脇本を合わせ切ることはできなかった。
「奈良、ウィナーズカップと同じような競走になってるし、(脇本も)失敗しないようにきますよね。山根も掛かってたし、これで来るかっていう感じだった。吉田(拓矢)君の横とかから、じわじわ来るイメージだったけど、サッと来られてしまった。自分は(一昨年の)オールスターみたいにヨコが使えてなかった。しっかりと体で止めないといけなかった」
脇本を目標に最終2コーナーからまくった吉田拓矢は3着まで。
「(佐藤)慎太郎さんのところにスイッチできれば良かったけど、そんなスピードでもなかった。(今シリーズは)体もキツかったし、このあとはもう1回セッティングとかを練り直して、(次回に)いいパフォーマンスが出せるようにしたい」