番手まくりで記念初V
中川誠一郎が制した18年の宇都宮記念から数えること9回目のG3決勝。その時は準Vだった山田庸平が、今度は番手できっちりとチャンスをモノにした。
「(G3初優勝は)そこまで意識してなかった。通過点と思ってやってきた。その結果、優勝できたんで良かった」
一昨年10月の寬仁親王牌で初めてG1の決勝の舞台を踏んだ。そして通算3度目のG1ファイナルとなった今年6月の高松宮記念杯では2着。タイトルが手に届くところまできていた。
「自分は力がないので、一戦、一戦しっかりと積み上げていく。そこを何年もやってきた」
デビュー15年目に突入した山田に、地元地区の記念シリーズでチャンスが巡ってきた。郡司浩平の当日欠場により8車立て。伊藤信が単騎で実質先行1車のメンバー構成だったが、中川誠一郎は主導権取りに迷いがない。いったん切って出た和田健太郎が九州勢を受けて、中川が駆ける。最終周回では山田に盤石の態勢ができあがった。
「(井上)昌己さんまで付いてきてたんで大丈夫かなと。ビジョンを見てたので、(伊藤が仕掛けてきたのも)わかってました」
伊藤を合わせるように、5番手の守澤太志がまくりで襲い掛かる。守澤の勢いを確かめた山田が、最終バック手前で番手まくりの選択をした。
「(守澤が来たのが)わかった。昌己さんに番手を回してもらったんで、チャンスがある仕掛けをしないとって、早めに踏んだんですけど」
守澤を合わせて番手まくり。井上とのゴール勝負かに思われたが、守澤は井上をキメて山田にひたひたと迫った。
「(最終)4コーナーで(後ろが井上ではないのに)気づいた。(番手から出るのが)早すぎても、遅すぎてもダメだし難しかった。ただ、自分はすんなり(番手を)回ってたんで余裕はありました」
直線に入り守澤が外に持ち出すも、山田との差はつまらない。山田が先頭でゴールを駆け抜けた。
「(4月の)武雄記念くらいからレースを走ってて、(調整が)うまくいかなくて修正をした。(前回から中3日の)短い期間だったけど、調整したのが良かった。昨日(準決)、いいレースができたのが自信になりました」
準決は俊敏な立ち回りからまくりを繰り出し、“らしい”走りで地元の井上とワンツー。決勝につなげた。現在のところ獲得賞金ランクは7位。初のグランプリ出場も視界に入っている。
「もし仮にグランプリに出られたとしても、力がないので(S級S班の)来年がキツいなじゃないかと。それ踏まえて脚力をつけたい。昨日とか初日の郡司君みたいに。脚力が違うんで、そこを(目指して)やっていかないと。でも、ちょっとずつ結果が出ていると思います。いつも中川さんに引っ張ってもらっているので、自分が前でやれるくらい強くならないと」
あくまでも通過点。九州を引っ張る力をつけたその先にグランプリがある。
周回中は4番手を和田健太郎と取り合った守澤太志は、和田健が切って出たあとに九州勢が主導権を握ると5番手で態勢を整える。最終2コーナー手前から仕掛けたが、山田に合わされて井上をキメてスイッチ。2着に流れ込んだ。
「(周回中は)引く気はなかった。そのあとは(4番手に)追い上げてもいいけど、それじゃ勝負にならない。自分のタイミングで(仕掛けて)行くしかなかった。(合わされたあと井上の横には)地元なんで、できれば行きたくなかった。記念の決勝で自力でやって、(ラインんも和田圭と)2、3着ならやった方でしょ」
守澤マークから3着に流れ込んだ和田圭が、守澤の動きに脱帽してこう振り返る。
「(守澤に)感動した。守澤の出が良かったんで、行っちゃうかと思った。自分との力差を痛感しました。新田(祐大)も頑張っているし、自分ももっと練習しないと」