地元記念連覇でグランプリへ
役者が違った。終わってみれば、そんな松浦悠士の地元シリーズだった。
「初日は勝ちたい気持ちが強すぎて、わけのわからないレースをしてしまった。初日のお客さんには迷惑を掛けてしまった」
こう振り返ったように暗雲が垂れ込める初日特選だったが、2日目からは3連勝で地元記念連覇を遂げた。
「最初は坂井(洋)君が追い上げてきたのかと思ったら、(原田)研太朗だった。やればできるじゃんって感じでした(笑)」
レースは、押さえて出た犬伏湧也が主導権を握る。犬伏、久米良とは別の原田が3番手にスイッチ。松浦は4番手に収まって打鐘を通過した。徳島勢が分かれて、松浦も別線を選択。タッグを組めば心強い前の3人だが、決勝ばかりはそういうわけにもいかず油断することなく前団を見極めた。
「(原田が)だいぶ車間を切っていたし、あれなら仕掛けるだろうと。それなら仕掛けを待ってからでもと。(原田が)ピッタリと付いていたら、自分で仕掛けようと思っていた」
坂井洋を6番手、近畿コンビを後方に置いて、犬伏が敢然と風を切って駆ける。原田は車間を詰める勢いで、最終2コーナーでまくりを打つ。犬伏を楽にのみ込んだ原田に続いた松浦は、今度は後続との間合いを取り反撃に備えた。
「今日は車輪を換えたんですけど、どうかなって感じだった。反応はすごく良かったんだけど、ゴール前はあれっていう感じだった。無我夢中だったし、(坂井との勝負に)押し切っている気もしたし、いかれている気もした」
原田をロックした松浦は、直線半ばからまくりで迫る坂井洋との勝負。最後のハンドル投げにまで持ち込まれたが、4分の1輪は着差以上の余裕があったように映るゴールだった。
「(レース全体では)余裕はあったんですけど、伸びなかった」
年末のグランプリ9人のメンバーが確定した11月の競輪祭後は、松浦だけが大一番を前にレースに参加した。連覇のプレッシャーがかかる地元記念、その重責を背負って、期待にも応えた。
「(初日の)あの感じでグランプリにいってたらと思うと、ゾッとするところもあります。グランプリでもしっかりと自分の位置を取ってやらなければいけないと思っている。地元だし、グランプリもあるし、ワガママを言って自分でやらせてもらった。地元を走るといつもより応援してくれる人たちがいる。そういう気持ちで(次の)グランプリにいけるのは大きい。この応援を力に変えたい」
この4走をアドバンテージにして、グランプリを制し念願の賞金王に。地元での声援に後押しされて、松浦が決戦の地、平塚に向かう。
最終3コーナーからまくり追い込んだ坂井洋は、好スピードで松浦を追い詰める。が、最後は松浦に体を寄せられて2着。
「得意展開だったのに、弱い。(山田敦也が松浦に)離れたのに気づくのが遅かった。あそこで立ち上げるのが遅れた。あのスピードでコーナーで斜行されたら浮いちゃう。斜行されて力が抜けちゃうのは自分の弱点です」
同県の後輩、犬伏がいながらも単騎を貫いた原田研太朗は、俊敏に3番手を確保。まくりで逃げた犬伏をのみ込んだ。
「寺崎君と犬伏君のやり合いを見て、臨機応変に動こうと思ってた。(車間を)詰めてたらもっと後ろを引き出すかなと思って切っていた。後輩には申し訳なかったけど、自分は単騎だし(まくって)行きました。自分は余裕はなかった。でも、(松浦は)冷静でしたね」