数的不利を跳ね除け完全V
グレードレース21個目の優勝(SSカップみのりを含める)は、G1、2を入れても初めての完全V。
「初めての記念完全優勝です」
昨年10月の寬仁親王牌で史上4人目となるグランドスラマーの仲間入りを果たした新田祐大は、開口一番、こう言ってはにかんだ。
初日特選はグランプリ同様に新山響平、二次予選では坂本貴史の番手で連勝。自力で別線を沈めた準決で、無傷の3連勝の優出。しかしながら、決勝は南関勢が、郡司浩平を番手に盤石の5車で結束。数的には圧倒的に不利ではあったものの、同地区の仲間のためにも弱気になることはなかった。
「まずは(初日、2日目の)2日間は、先輩だったり、後輩の頑張りがあっての1着。今日も勝負するところを気を緩めずにしっかりと勝負ができた」
最内枠の利と爆発的なスタートダッシュで郡司を制して、周回中は前からレースを進める。当然ながら南関勢も、新田の出方は織り込み済み。4番手から松井宏佑が赤板目がけてフルダッシュ。新田も松井に合わせてスピードを上げて、番手に飛び付いて南関勢を分断策に出た。
「(松井が)押さえに来るのも厳しくなるだろうと。そこに絶対に遅れないように。後手にならないように踏んでました。(飛び付いて)僕自身キツかったですけど。敵の郡司君も外でキツかったと思います」
一度は遅れた郡司だが、簡単に番手を明け渡すわけにはいかない。再度、外を踏み込んだ郡司と併走のまま、新田は打鐘を通過した。
「(番手争いの)決着がついたところを目がけて、(北津留翼が)飛んで来ると思ってました」
最終2コーナー手前で郡司に踏み勝った新田は、同期のライバル、北津留に合わせてまくった。
「松井君がペースで駆けてたんで苦しかった。あとはガムシャラでした」
後方から加速をつけてまくった北津留も、4分の3車身まで詰めるのでいっぱい。新田のスピードは衰えることなく、新春の立川バンクのゴールを先頭で駆け抜けた。
「去年は順風満帆とはいかなかった。そのなかで苦しい思いもあったし、報われる思いもあった」
昨年は5月の日本選手権の前検日の指定練習中に落車のアクシデントに見舞われて、発走機につくことなくシリーズを欠場。怪我が完全に癒えてないなかで、10月の寬仁親王牌Vでグランドスラムを達成。S級S班、返り咲きを決めた。
「(昨年は)あきらめないことを学んだ。その気持ちを忘れずに、高みを目指しながら、一戦、一戦を戦いたい」
“不撓不屈”。さらなる高みへ、グランドスラマーに隙はない。
単騎の北津留翼は、北日本と南関のもつれを9番手で待機。最終ホーム過ぎからまくって好スピードで迫るも2着。
「(走る前は)全然どうなるか予想がつかなかった。隊列が短くなってゴチャゴチャしたんで、外を踏んだ方が安全だと思った。そしたら新田君が番手にいて、出て行く感じだったのでスイッチした。(新田の)外を行っても合わせられるかと思ったので、それだったら連れていってもらった方がと。(交わせる手ごたえは)全然でした」
逃げて3着の松井宏佑が、南関ラインで最先着。ただ、ラインを分断されただけに複雑な表情。
「自分が後ろになった時点で新田さんは飛び付きか、ある程度抵抗してくるだろうと。赤板でいい勢いで切ったけど、(新田に)飛び付かれた。(後ろが併走になって)ベタ流しすると北津留さんも来るだろうと。ラインが長かったし、後ろの人の気持ちを考えると…」