まくりに転じる好判断のV
伊藤颯馬が切って、渡邉一成が中団、郡司浩平のカマシを出させずに伊藤が逃げる。そんな展開をイメージしていた山田庸平だったが、渡邉が打鍾前に中団から叩いて出たことから、すべてのプランが狂った。
「車番が悪くて前が取れずに後ろ攻めになった。押さえて、郡司君が来たところを突っ張るかどうかだと思ったら、(渡邉)一成さんが来て、想定と違う展開になりましたね。(伊藤)颯馬は落ち着いて引いてくれたんですけど、郡司君の仕掛けが早かった。颯馬は内に差して、引くのが遅れて立て直せなかった」
同県4車でラインを組んだ郡司が、早めに巻き返すのはもはや必然。伊藤が内でかぶって、もう山田は切り替えるしかない。自力に転じて最終2コーナーから猛然とまくりを放った。
「前ももつれていたし、半周まくりなら自分ももってるんで切り替えました。(まくれるか)半信半疑でしたね。最近は自力の時にあまり進んでなかったし、どうかなと思った。でも、福田(知也)さんを乗り越えればチャンスはあると思った。福田さんを乗り越えても、最近は4コーナーからの伸びがなかったから、まだ優勝かどうかはわからなかった。ゴールしたら、押し切ってたって感じです」
福田の強烈なけん制にも負けず、郡司をまくり切って、昨年7月佐世保記念以来、2度目のG3制覇。佐世保では、中川誠一郎と井上昌己に前後を守られて初めての記念制覇。そして今回は、シリーズで3度ラインを組んだ伊藤との連係からV。自力で一線級を張る山田は、さらに高い目標を掲げる。
「1回目(の記念優勝)は先輩に番手を回らせてもらって獲れて、2回目は後輩と連係して獲れた。今度は自分で動いて獲れるようになりたい。この後はウィナーズカップですね。それは1つの目標だし、その後は武雄記念に、ダービーもある。すごいモチベーションになるし、練習にも身が入りますね」
ここから数カ月、山田にとって気の抜けない戦いが続く。まず、最高のスタートを切ったことは間違いない。
単騎の松本貴治は、九州勢追走から山田に迫ったが2着まで。2度目の地元記念制覇にはあと一歩届かなかった。
「(山田)庸平さん次第のレースになっちゃいました。(最終)2センターで後輪がハネた。チャンスだったけど、最後にもうひと伸びできるようになればGIでも戦えると思う。そこですよね。シリーズを通して良かったけど、優勝できていれば一番良かった」
山田を精いっぱいブロックした福田知也だが、止め切るには至らず。郡司を交わして3着に入ったが、悔しさをにじませる。
「(ライン)4車いるし、(郡司が)一番良いところで行ってくれた。(山田)庸平が強かった。(最終)3コーナーで引っかかれば止まると思ったけど、内も気になって止まらなかった。勉強というよりも(自分の)脚ですね。脚があれば、4コーナーで踏み勝てた。神奈川から優勝者を出したかったですけどね。あと、もうちょっとでした」