勝機を逃さなかった梁田一輝
二段駆け態勢の関東勢が前を取った時点で、朝倉智仁の突っ張り先行は目に見えていた。外枠で、後ろ攻めを強いられた静岡勢は圧倒的に不利。その中で簗田一輝は一瞬の隙を見逃さなかった。
「(自分達が)前を取って、他の2つのラインがやり合ってくれるのが理想だった。後ろ攻めになって、二藤(元太)さんも付いて下さっているのでとにかく一回切りたかった。でも、朝倉(智仁)君が全開で踏んでいった。流れで空いたところに入った感じです。あの位置(3番手)を取り切らないと、優勝はなかった」
志村太賀が前と車間が空いたところで、内に降りて3番手を確保。最終1コーナーでは志村に内から当たられたが「自力がない分、最低限位置だけは取らないと」と、一度確保した位置は絶対に譲れない。単騎で巻き返した阿部将大と、番手まくりの黒沢でもがき合うその外を、一心不乱に踏み込んだ。
「(ゴール前は)ガムシャラだったんで、何も考えてなかったし、ちょっと覚えてない。3日間外を踏めてなかったし、最後は外で勝負する意識はあった。外を行ってなかったら、きっとモヤモヤが残ってたと思う。自分が目指していかなきゃいけないところは、外を踏んでラインで決めること。そうじゃないと、G1の上位で戦っている人たちと連係できない」
15年のデビューから7年11カ月でつかんだG3初優勝。近年は大きく調子を崩した時期もあったが、復活を予感させる4日間だった。これで競輪祭への出場権も手にして、次なるステップはもちろんビッグレースの舞台だ。
「何回も(G3の)決勝に乗って、本当はもっと早く優勝したかった。やっとって感じです。嬉しさよりも、ほっとした気持ち。調子が悪い時もG1を目標に練習していたし、日々を過ごしていた。また出場できるので、一つの段階はクリアできた。やっぱり自力が課題になってくると思う。深谷(知広)さんのグループの練習で、トップスピードも上がってきてる。もっと頑張っていきたい」
競輪選手として、これからが旬の27歳。もともとの競走センスに深谷仕込みのスピードが加われば、層の厚い南関勢にとっても頼もしい存在となり得るだろう。
志村太賀は最終1コーナーで簗田の内を狙うも、踏み負けてしまう。万事休すかと思われたが、もう一度最内を踏んで盛り返して2着に入った。
「(赤板で)自分が離れちゃって申し訳なかったですね。(打鐘)4コーナーで追い上げちゃうと佐々木(眞也)君のカマシ頃になると思って我慢しました。もっと(簗田を)持って行きたかったんですけど、3車併走だったんで難しかったですね。最後はほんとたまたま空いたんで」
番手まくりに出た黒沢征治が3着。朝倉の気持ちの入った先行に結果で応えることができず、レース後は悔しさを滲ませた。
「もう朝倉君が(突っ張って)いいペースで行ってくれたんですけど。力み過ぎましたね。後ろに簗田君が入ったのがわかったので引き付けようと思っていたんですけど、変な踏み方になってしまった。阿部君が来た時に踏み込んだんですけど(うまく力が)入らなかったですね。後輩が頑張ってくれたんですけど、もったいない。良くなってはきているので。次また頑張ります」