ワンチャンスを生かして単騎V
地元勢とは分かれて挑んだ決勝戦。松浦悠士の“競輪IQ”と脚力が、単騎の不利を跳ね除けた。
単騎となれば、勝負どころでの位置取りが、よりくっきりと明暗を分ける。それだけに、どこからレースを始めるかには、強くこだわった。4番手で郡司浩平との外併走を選択した意図をこう説明する。
「犬伏(湧也)君が前を取ったんで、突っ張り先行だろうなってイメージがあった。4番手からレースを進めたかったけど、(郡司が)入れてくれないとは思わなかったですね。でも、郡司君は脅威なんで、自分が脚を使ってでも郡司君に脚を使わせたかった」
3連勝で勝ち上がってきた郡司のデキを疑う余地はない。その郡司よりも前の位置。その絶対条件をクリアしても、前では新山響平が車間を空けて仕掛ける態勢を整えている。勝機は一瞬の隙にしかなかった。
「(最終)ホームで新山君のところに追い上げようかとも思った。でも、郡司君を引き出すことになるかなと思ってやめました。まくりに行く時に、番手選手は絶対一瞬隙ができる。そこ(坂本貴史の内)しかないと、ホームで追い上げに行かなかった時点で決めました」
超ハイスピードの中で、坂本を内からさばく離れ業で新山後位を奪取。直線で抜け出すと、最後は後ろから迫った郡司とのデッドヒート。一昨年の日本選手権決勝、そして昨年の川崎記念決勝と、同級生のS班2人のゴール勝負は、何度見ても胸が躍る。今回は、タイヤ差で振り切った松浦に軍配が上がり、昨年12月広島記念以来19回目のG3優勝となった。
「正直、郡司君に行かれたと思った。でも、ゴールしてから郡司君にまたかよって言われて(笑)。それで獲ったかなと思った」
年間を通してハイレベルな成績をキープできるのが松浦の強み。それが今年はなかなか体調面が整わなかった。だが、高松宮記念杯での決勝4着は、結果以上に内容のあるものだった。そして中四国地区の新たなスターとの連係も、松浦にとって復活への大きな好材料となった。
「今日(決勝)に関しても、犬伏君の強さが光ったレースだと思います。(犬伏の番手に付いた)昨日のキツいレースで、脚に刺激も入りましたね。良い感じの脚の張りがあった。高松宮記念杯で手応えはつかめましたし、その通りの結果を出せた。自転車の進み具合がマッチしてますし、今後が楽しみに思えた。得意のサマーナイトフェスティバルで、3連覇を目指したい」
本格的な暑さが到来し、ハイスピードバトルにどれだけ対応できるかがカギとなる。輪界屈指の『夏男』が、直後に迫ったサマーナイトフェスティバルで、偉業に挑戦する。
郡司浩平は松浦にタイヤ差及ばず。それでも、4日間自力で動いてハイレベルの走りを見せた。
「(犬伏が)突っ張る気配があったんで(4番手を)譲りたくないなと。でも、宿口(陽一)さんの動きでワンチャン新山が切れるんじゃないかと思って下げた。詰まって、しゃくれそうなところで反応ができなかった。ああいう(松浦とのゴール争いの)シーンは何回もあって、前にいないと届いてない。そこら辺は自分の劣るところだし、大きいなって。(4日間)自力で戦えたことに意義がある。感覚的に(ズレているの)は自転車だなってわかったんで、中4日で自転車の調整は難しいけど、サマーナイトフェスティバルはイメージ通りに走れるようにしたい」
新山響平は地元3車をまくり切ったものの、後ろが敵の不運。3着にも手応えは得た。
「宿口さんの動きで展開が向いて、切れたけど犬伏君の巻き返しが早くて突っ張れなかった。迎え入れてもらって、キツかったけどもう1回無理やり仕掛けた。うまく動けましたね。ズルズル引かずに、迎え入れてもらえたのが大きかった。何回も波があるペースだとフォームが崩れるのは課題。でも、犬伏君をまくれたのは収穫ですね」