24歳の眞杉匠が初戴冠
後続を離して初戴冠のVゴール。眞杉匠が拳を突き上げて、ファンの声援に応えた。
「(番手まくりに)行ってから一切、後ろを見る余裕はなかったです。ガムシャラにゴール線目がけて踏んでました。けど、ゴールした瞬間は確信して手を挙げちゃいました(笑)」
眞杉は、こう言ってはにかんだ。「おまえが獲ってくれて良かったよ」との平原康多の言葉に象徴されるように、関東の仲間、みんなが眞杉の優勝を称えた。
中四国勢が2つに分かれた決勝は、関東勢は盤石の4車結束。眞杉にとっては年上の吉田拓矢がラインの先頭を買って出て、地元コンビが3、4番手を固める布陣。別線も強者ぞろいだったが、優勝へのレールは敷かれた。
「ラインに感謝しかないですね。(準決が終わって)昨日は、全然眠れなかった。(ゴールした瞬間は)夢のようでした。(吉田)拓矢さんが全部突っ張るっていう感じで、おんぶにダッコでした。(吉田が赤板過ぎからペースを上げて突っ張って)最初の1周とかは余裕がなかった。(最終)ホームに帰ってきて余裕が出てきたので、後ろを確認しながらって感じでした」
関東勢が前団。犬伏湧也を突っ張った吉田が、そのままペースを落とさずに駆ける。8番手に戻った犬伏は大きく立ち遅れて、打鐘ではすでに厳しいポジションにいた。今度は6番手の清水裕友が、関東勢に襲い掛かる。が、眞杉は落ち着いていた。ギリギリまで引きつけて、最終1センターから番手まくり。先頭に立つと、平原康多と清水のもつれをしり目にグングンと加速した。
「(清水が)来ていたので、タテに踏ませてもらいました。ちょっと平原さんには付きにくい感じになってしまったかなと思います。距離的には(吉田が)だいぶ行ってくれていたので、そこから目いっぱいでした」
山田庸平はラインの武藤龍生がさばいて、単騎の古性優作が直線で強襲するも時すでに遅く、3車身の差をつけた眞杉が先頭でゴールを駆け抜けた。
「2日連続の番手戦で吉田(拓矢、有希)兄弟には世話になりっ切りというか、これから恩返ししていかないとなって感じです。(デビューから目標に)タイトルというのは言ってはいたけど、実際に獲れるのかなっていうところが大きかった。一昨日のシャイニングスター賞にしてもそうだし、力の差がすごいあるのはわかっている。グランプリは確定したけど、しっかりそこで戦えるように練習したいと思います」
栃木から久々に生まれたタイトルホルダー。5度のオールスター制覇のレジェンド、神山雄一郎でさえも、初戴冠は25歳だった。
「(同県の先輩の神山は)25歳で自力で獲ってると思うんですけど、今日(の自分)は全部やってもらってヨイショしてもらってなので。自力でしっかり獲れるように。本当に(関東勢に)恩返しですね。(今後は)現SSと力差を埋めてしっかり戦えるように頑張るしかない」
27歳でダービー王になった山口拳矢に次ぐ、今年2人目の20代のタイトルホルダー。確実に押し寄せる世代交代の波。その旗手として、眞杉が関東勢をリードしていく。
番手、3番手が地元勢と清水、山田でもつれて、その後ろの単騎の古性優作は、直線で中のコースをこじ開けて2着。
「理想は(最終)1コーナーくらいで行きたかったんですけど、清水も隙がなかった。ちょっと緩んだところがあったんでバック(過ぎくらいから)ケツを上げて踏んだけど、全然出なかった。(最後のコースは)あれが精いっぱいでした。難しいですね。あとはVTRを見て、どうやったら優勝できたか考えます。もっとシビアに走らないといけなかったかなとか」
最終3コーナーで併走していた外の山田をさばいて追い込んだ武藤龍生だったが、古性に弾かれて3着。
「2周のホームのところで口が空いて脚を使ったけど、平原さんを信頼してよく見て、(平原と清水の)勝負を見てから踏んだ。拓矢が頑張ってくれたけど、失格になって悔しい気持ちですね。ラインのおかげで眞杉は優勝できたけど、いつもラインのために頑張っているので、眞杉の優勝はとてもうれしい」