番手から19回目のG3制覇
川越勇星がこれ以上ない展開をメイク。敢然と風を切った川越の気迫をひしひしと感じた。別線になった地元の岩本俊介の気配を察知した深谷知広は、番手まくりでその気持ちに応えた。
「彼(川越)のなかで強い決意があった。気合がすごく伝わってきたんで、なんとか(ラインで)ワンツーを決めたかった」
同地区の郡司浩平は、まさかの準決敗退。南関勢にとっては思わぬ事態になったが、郡司の後輩である川越が決勝で迷うことなく突っ張り先行に出た。地元勢とは分かれての戦いだったが、北日本の大森慶一が後位を選択。大森との上位独占が深谷にとっての使命だった。
「なるべく引きつけてからと思ってた。そこは少し落ち着いていました。(岩本が来たので)前に踏ませてもらいました」
脚を使わずに好位にいた平原康多でさえクギづけ。深谷は別線に影さえ踏ませることなくゴールを駆け抜けた。
「ラインに助けられて優勝が続いている。ラインの力です」
郡司を目標に1月の大宮記念を奪取。直近での優勝となった3場所前の伊東FIでは、北井佑季の先行を番手から追い込んでの地元優勝。それだけに深谷はラインに感謝を忘れずにこう口を開いた。
「(今年の後半戦に向けて)これから上げていかないといけないので、気合を入れて頑張りたい」
前回のオールスター初戦のオリオン賞は、単騎でシンガリ負け。狂ったリズムを勝ち上がりで取り戻すことはできなかったが、根田空史の番手で最終日に1勝。軌道修正した今シリーズも、初日特選で郡司の番手から勝ち切って波に乗れた。これまで数え切れないほど、先頭でラインに貢献している深谷だからこそ、ラインのありがたみはわかっている。今度はラインの引っ張って…。その強い思いは変わらない。
4車の南関勢が分かれて、大森慶一は深谷後位を選んで2着。外枠ながらもロケットスタートで、ラインは思惑通りの展開に運ぶことができた。
「一瞬、負けたかなと思ったけど、スタートは意地で取りました。(川越が)落ち着いて仕掛けていってくれて良かった。(最終)ホームでは詰まったけど、そのまま(深谷が)行ってくれた。(2着で)最低限のことはきっちりできたと思う。(深谷を抜くとか)そういうレベル(のスピード)じゃなかった。出ていった時に引きずり回されました」
川越ラインの突っ張りを想定していた平原康多が、周回中は4番手を確保。脚をためてはいたが、番手まくりの深谷の加速にはお手上げだった。
「普通にいったら後ろ攻めになって、突っ張られて岩谷(拓磨)君と同じ状態になってしまう。それで必死にスタートを取りにいきました。(川越ラインは)あれが見え見えだったので、後ろにいると勝負権がない。いまの状態でできることをすべてやろうと思ったが、深谷がすごかった。加速していっている感じだったので、仕掛けていける感じじゃなかった」