乗れてる金子幸央がG3初制覇
「今思えば、あの事故も人生経験として生きている。どんなに苦しいことがあっても、あの時よりは苦しくないなって思えるので」
3年前の20年12月、街道練習中の交通事故で背骨と左手首を骨折。130日以上の欠場を余儀なくされて、引退の危機にまで追い込まれた金子幸央が、復活のG3初制覇を噛みしめるように振り返った。
「小林(泰正)君の後輪だけ見て、全面信頼で付いているだけでした。ジャンで前がもがき合っているのが見えたんで、チャンスだなって。関東勢に流れが来てるなって思いました。流れも気持ちも乗ってたので、落ち着いてレースができていたと思います。関東の3人の中から優勝者を出さないとと思って、思いっきり踏みました」
岡崎智哉が打鐘で先頭に立ち、立部楓真が古賀勝大をすくって隊列がヨコに揺れ動く。小林が最終ホームからスパートして前に迫ると、最終バックでは岡崎、立部、小林で3車併走。金子は3コーナーからそのさらに外を踏んで突き抜けた。2日目に強烈なロングまくりを決めてから破竹の3連勝でのV。本来のスピードが完全に戻った。
「記念の決勝とか、F1での失敗が自分は多かった。でも、あの時ああやって失敗したなってことを、今回は失敗しなかった。良い反省ができていました」
デビューから11年でつかんだG3初優勝。昨年の宇都宮記念は決勝で眞杉匠の番手を回ったものの、2着に終わって悔し涙を飲んだ。ゴールの瞬間は、様々な思いが込み上げた。
「ゴールした瞬間、宇都宮記念の悔しさを思い出して声が出た。あの時は吉田(拓矢)君が優勝してくれて良かったけど、眞杉が頑張ってくれたのに優勝できなかった自分が悔しかった。あれから1年間、ずっとG3を優勝したかった」
これで、競輪祭への出場権もゲット。G3覇者として、G1の舞台へと返り咲く。
「2着と優勝じゃ雲泥の差があると思っているし、競輪祭は優勝者のプライドを持って走りたい。G1の決勝にはまだ乗ったことがないし、次の目標はそこですね。それに、今回はオールスター組がいないし自分にとっては通過点。もっと上を目指してやっていきたい」
苦難と悔しさを乗り越えてつかんだ初優勝。だが、喜びに浸るのはまだ早い。甦ったそのスピードは、さらに上の舞台でこそ輝くのだろう。
阿部力也は勝負所で5番手を確保。最終2センターでは前がもがき合うなかでコースを探して、直線で2着まで伸びた。
「前々に動いて、コースを見極めてラインの2人で決まるようにと思ってた。小林君に合わせてとまくれればと思ったけど、そこまでの脚はなかった。今の状態で2着ならやった方です。ちょっとは光が見えてきた」
関東ライン3番手の芦澤大輔は最終3コーナーで金子に口が空いて3着。
「金子君が車間を切ってから踏んだから、あそこでグンってなって惑わされてしまった。でも、大混戦だったからレースを走っていて面白かった。若手に付いて行けることが分かったし、グレードレースで活躍できるように頑張りたい」