番手まくりで記念初制覇
「うれしいです。関東のみなさんに感謝です。(眞杉匠との連係での優勝が)めちゃくちゃうれしい」
少年のような森田優弥の顔が自然とほころんだ。
関東勢は5人が1つになって結束。番手の森田が前を委ねたのは、同期で先のオールスターで初タイトルを奪取していた眞杉だった。
「(レース前に)自分が緊張していたのは、眞杉にも伝わったみたい。それで自分を和ませてくれて、リラックスできました」
こう口を開いた森田は、“眞杉効果”かレースでは至って冷静。落ち着いた判断と立ち回りが光った。前団に構えた関東勢は、眞杉が赤板過ぎに誘導を降ろしてそのまま先行策に出る。一本棒の7番手から新山響平が、2コーナー過ぎに反撃。眞杉もペースを上げて駆けるが、新山が関東勢に襲い掛かった。
「新山さんも強いですし、犬伏(湧也)さん、北井(佑季)さんもいる。まずは(自分たちが)レースをつくってと。赤板からの1周はすごいスピードだった。(別線は)もう誰も来られないだろうなと。あとはホームの風が強かったんで、そこくらいからの勝負だろうと。でも、(眞杉の)タレ幅もそんななかったので、後ろを確認しながらでした」
新山がライン3番手の平原康多の外辺りまで迫ると、森田は意を決して番手まくりを敢行。先頭に立って最終バックを通過した。
「ラインのみなさんが心強かったんで、自分を信じて踏み切りました。眞杉も掛かってたんで、ギリギリまで引きつけた」
犬伏がスピード良くまくるも、最終2センターで失速。直線の入口では、森田、平原、佐々木悠葵の関東3人に勝負は絞られた。
「(立川の直線が)ビックリするくらい長かった。地元の大宮より長く感じました」
外から伸びる佐々木を半車輪差で退けて、ゴール線を真っ先に駆け抜けた森田が記念初制覇を遂げた。
「佐々木さんも来ていたんですけど、スローリプレイで(優勝したのを)確認した」
失格を重ねた昨年は、12月の立川で5度目の失格を喫して22年を終えた。そのペナルティもあり、5月からの3カ月は配分がなく、長期の戦線離脱を強いられていた。それだけに8月の復帰から4場所目での記念初Vは、森田にとっては大きな励みになるに違いない。
「並ぶって決めて、眞杉から言ってくれたんで、これからは自分はもっと頑張らないといけない。(優勝できたのは)ラインのおかげ。競輪はラインだと思った」
ラインの力でオールスターを制した眞杉が、今度は同期の森田を盛り立てる積極策。関東の若手が流れを切らせることなく、ラインとしての競輪を大切に受け継いでいっている。
不慣れな4番手の佐々木悠葵だったが、平原を危なげなく追いかけて直線を迎える。外を踏んで平原を交わして2着に入った。
「難しいですいね、4番手は。反応が4回目になるので、ズレがどんどん大きくなる。脚も結構、削られる。守澤(太志)さんや北井さんとか誰かしらが来ると思っていた。自分が外を踏んで、内は高橋(築)さんのコースだと。踏みごたえはあった」
埼玉ワンツーに思われたが、直線で伸びを欠いた平原康多が3着。最終ホームで脚を使ったことが最後まで響いたようだ。
「眞杉がすごい掛かりだった。ホームの向かい風がすごくて、最終ホームで詰まって外に差し込むと(別線に)内から来られるから内に差し込んだところで踏まれた。結果的にはいい援護になったけど、かなりキツい形になった」