ラインの力で久しぶりのビッグ制覇
“バースデー”シリーズとなった脇本雄太が、久々のビッグ制覇。35歳、年齢を考えれば、当然の順番だったのかもしれない。盛り立てた後輩を脇本が労う。
「決勝は後輩の2人がすごくいい動きをしてくれたので、本当に感謝しかないです」
自身が最内の1番車ながらも、ダッシュを利かせた古性優作がスタートを制して近畿勢が前団に構える。北井佑季の上昇を察知したラインの先頭の窓場千加頼は、グングンと踏み込んで風を切った。
「(北井がどこから仕掛けてくるかの)そのあたりは窓場君がしっかり見てくれてると思いますし、油断はしてないと思ったので僕は窓場君の後輪に集中した」
フルアクセルの窓場が北井を合わせ切り、主導権を渡さない。が、北井は簡単に下げることなく、打鐘3コーナーから脇本の外にへばりついた。北井が締め込みながら番手奪取を目論んだが、脇本もこらえる。2人の決着を待つことなく、単騎の伊藤颯馬がロングまくり。最終2コーナーで伊藤が窓場をとらえて、北井と併走のまま切り替えた。
「(北井との)併走に対しても、当たられたらしっかり返そうっていう風には思ってたんですけど。そのあたりはしっかり我慢し切れたかなと思います。(伊藤が仕掛けてきて)そこはかぶっていたところもありましたし、慌てずにしっかり対処してからと」
最終バックでも北井とケリがつかずに重なったまま。その上を清水裕友も迫ってきていた。
「(最後は)前に選手もいたし抜けるかどうかちょっと心配だったんですけど。4コーナー回ってからは直線勝負できるなって思ってました」
3コーナーを過ぎて外の北井が徐々に後退。脇本も脚力を消耗していたが、直線で伊藤をとらえにいく。並ぶ間もなく伊藤を交わした脇本が、真っ先にゴールを駆け抜けた。
「今開催(の優勝)は、ラインの力に助けられたレースだった。まだ不調のなかでの戦いだったんですけど、ラインの力があれば自分のいまの不調のなかでも優勝できるっていうのを思いました。今後はそういうことも含めて、いろいろ経験を積んでいきたいと思っています」
昨年8月のオールスターの落車で長期の欠場を強いられた脇本は、24年の始動となった大宮記念を途中欠場、続く平記念では落車に見舞われていた。調子を崩しリズムをつかめなかった脇本が、後輩の頑張りと自身の進化でつかんだ昨年4月の武雄記念以来の優勝。「この調子で(4月30日からの)ダービーを頑張れたらと思います」と、この勢いを加速させたい。それだけに昨年は無冠に終わった脇本にとっては、意味のあるG2制覇だろう。
古性優作は、脇本の後ろで大立ち回り。最終2センターで北井を弾いて大きな波をつくると、返す刀で内のコースをシャットアウトして流れ込んだ。
「脇本さんと北井さんで有利、不利になるのが交互にあって、後ろに付いていてどうなるかなって。そうしたら後ろから(清水)裕友がきていて、北井さんをもっていったら、その上も飛ぶかなって。その瞬間に脇本さんが踏んですごい勢いで加速した。脇本さんはゴールに向かって伸びていきましたね。真剣勝負ですし、思いっきり内から踏んだんですけど、脚力の差が出ました」
併走の上を最終バックからまくった清水裕友だったが、古性のブロックを受けた北井に弾かれて立て直しを余儀なくされて3着まで。
「どのラインが前でも中団と考えていました。北井さんが出られなかったらハコいくのも考えていた。その対応を見ながら、単騎の伊藤君が行って、整えて、脇本さんが(北井とからんで)ほどける前に乗り越えられたらでした。けど、ほどけたがのが見えて、(最終)3コーナーであおりもあって浮いた。精いっぱいでしたね。2、3着ではなく、あそこを仕掛けないと優勝はない。ちょっとのところですけど、だいぶ脚力差があるなと」