価値ある3度目のG3制覇
川崎記念5連覇を狙った郡司浩平や、昨年のMVP古性優作、新山響平と、佐藤慎太郎の北日本SSコンビ。目移りしてしまうほどの豪華メンバーで行われた決勝を制したのは、熊本のニューエース、嘉永泰斗だった。
周回中は5番手の位置取りからレースを進めた嘉永は、後ろ攻めの新山よりも先に動き出して赤板で押さえる。すかさず郡司が切って、新山が叩く。勝負どころで6番手に置かれても、焦りは一切なかった。
「初手から想定内の並びでした。新山さんが後ろ攻めになるのも想定に入れていたし、焦らずに。先に切って、3、4番手が取れればと思ってたけど、郡司さんが来たので引いて、行けるところから仕掛けようと思った」
3番手を狙った松本貴治と、郡司が最終ホームで重なる。そのワンチャンスを逃さずに、怒とうの勢いでまくり上げた。
「(松本)貴治さんと、郡司さんが3番手にいて、そこの折り合いがつく前に行けば、チャンスがあると思って仕掛けました。(佐藤)慎太郎さんにいいけん制をもらったんですけど、なんとか乗り越えて。乗り越えれば(優勝まで)いけると思って、あきらめずに踏みました」
佐藤のブロックを乗り越えて、ゴール線を目指して目いっぱい踏み込む。近畿勢の強襲もこらえて、昨年の函館記念以来、3度目のG3制覇を成し遂げた。2日目に新山をまくったあとには「ここ最近で一番いい」と、納得の手応えを口にしていた。準決で古性のまくりの上を行ったことも、衝撃的だった。2日目から3連勝で遂げたこの優勝は、輪界に大きなインパクトを残した。
「今は、G1の決勝に乗ることが目標。決勝に乗れれば(優勝する)チャンスはあると思う。ダービーに向けて、しっかり練習します」
昨年11月の競輪祭は、2走目に落車の憂き目。今年2月の全日本選抜は、初日特選スタートながら二次予選で敗退と、G1ではまだ真価を発揮できていない。熊本競輪場の再会が目前に迫り、もうネクストブレイクと言われる存在ではいられない。この優勝で勢いづいて、ダービーへ。いよいよ九州の次世代エースが、春を迎える時が来た。
勝負どころで8番手となった古性は、九州勢を追走して外を踏む。山田久徳は、古性の外を伸びて2着に食い込んだ。
「本当は前中団が良かったけど、(スタートを)出てしまったので。新山君が出るかと思ったけど、意外とみんなが出なかった。(古性は)やりにくかったと思うし失敗。切って切っての流れになったので、(古性は)どこかで行けるなって感じだった。余裕はあって抜きにいったけど、内は見えていなくて何着かわからなかった」
古性優作は、車番の不利を跳ね返せず。今節の直前に体調を崩し、シリーズを通して苦しい戦いが続いた。
「(山田が)前を取ると思ってなくてヤバいなと思った。僕だけなにもしていないし力不足。迷ったけど(新山の仕掛けに)スイッチしていければ良かった。(最終)ホームの緩んだところで行けば良かったけど、しんどかったし、そこ以外も全部しんどかった。(体の)中心に力が集まっていない。いい感じに戻していきたい。(自分が)弱いだけなので、明日からまた練習します」