乗ってる阿部将大が魅せた!!
菊池岳仁が早々に動きだし、青板バックで大川剛の横に並ぶ。大川ラインの二段駆けが、レース前の大方の予想だった。そうはさせまいと、菊池は大川を内に封じ込めるように体をぶつける。誘導が退避する前から、両ラインの思惑がぶつかり合う。単騎の阿部将大は、5番手のポジションで、まずは戦況を見つめた。
「2番車がもらえたんで、スタートの位置取りは大事に。あの(大川ラインの後ろの)位置は狙っていました。大川君は、引かないだろうと。思った通りの展開でした」
大川が菊池を突っ張り切って、レースは打鍾前からハイペース。阿部が、最終2コーナーからまくりを放つと、呼応するように坂本貴史が番手まくり。菊地圭尚のけん制を乗り越えた阿部と、坂本の肩が並んだのは4コーナー。そこからグイっともうひと伸びした阿部が、ゴール前で坂本を抜き去った。
「どこまで行けるかって感じで踏み出しました。ちょうど、3コーナーで坂本さんと折り合ったんで、これは直線勝負になるなと思った。なので、コーナーでは回す感じで踏んで、脚をためられました。2センターを超えて、4コーナーに入るところでは出られるなと思ったし、あとは後ろの酒井(雄多)さんに来られないようにと」
展開を読み抜き、見た目以上に繊細な仕掛けで、4月高知記念以来、3度目のG3優勝をゲット。SS班を打破した高知記念の優勝も価値のあるものだったが、今節は競走得点トップとして、毎日最終レースを任された中での優勝。ラインの中川誠一郎に差された初日特選以外は、全てきっちり勝ち切った。
「結局全部まくりになった。二次予選も、準決勝も、ラインの九州勢を連れ込めなかったのは僕の技量不足だと思います。点数上位者として、ラインを連れ込むことも大事だと思う。やっぱりG1の準決勝とか、決勝に乗るような選手になりたい。それにしては、連日小さいレースでした。もっと大きいレースをしていけるようにしたいです」
GIへ挑戦していくと同時に、これからは受けて立つ立場にもなる。ステップアップを誓ったその表情は、2年前の高知で初めてG3を勝った時よりも、何倍も凛々しかった。
番手まくりに出た*坂本貴史だったが、阿部に外を行かれて2着。2度目の函館G3制覇を逃した。
「前受けから大川君が自分のレースをしてくれた。1周半から良いカカりで駆けてくれた。ライン4車だったのに優勝できなかったし、自分だけ確定板に入る形になってしまった。(大川が)タレてきているところで踏んだのでキツかった。(菊地)圭尚さんは地元優勝がかかっていたのに、自分か、圭尚さんが優勝できるレースができなかった」
6番手から前の阿部を追っていった酒井雄多が3着。
「(菊池と大川が)やり合ってて、大川君が押し込まれるような感じになった。もしかしたら(菊池が)切るパターンもあるなと思って、追い上げられるように準備だけしていました。大川君が結局突っ張ったんですけど、ジャンのところのダッシュで千切れた。自力の中で、僕だけ圧倒的に脚力が足りなかった。ずっとスカスカしてただけで、まくろうとか、外に外そうとか、全然考えられなかった。競輪祭の権利は取れたけど、このままじゃ半年後に泣く。一から作り直します」