記念初Vは地元で4連勝
18年7月にプロとしての第一歩を踏み出した前橋。そのデビュー戦は、いきなり失格の憂き目をみて、以降もホームバンクの前橋では一度も優勝がなかった。地元初Vが記念初制覇。完全優勝のオマケつきで、小林泰正は満面の笑みで汗をぬぐう。
「本当にラインのおかげで、ここまで来られた」
S級S班の眞杉匠が先導役を務めて、同県の佐々木悠葵が後ろを固めた。しかしながら、関東勢が大挙5人も決勝に進出したことで、もう1人の同期、森田優弥とは別線になった。その森田が赤板手前から眞杉に襲い掛かり、先行争いはデッドヒート。眞杉が意地で主導権を守り抜いた。
「森田がすかさず来て、(それを眞杉が合わせたあとに)窓場(千加頼)さんが来ると思ってた」
力尽きた森田は、最終1センターで後退。後方に置かれていた窓場は仕掛けられずも、今度は平原康多がまくる。小林は2コーナーで番手まくりの選択をした。
「自分が(番手から)出るのが遅くなって、佐々木がからまれてしまった。そこだけ甘かった。(平原の)動きを見てから出ちゃったんで、反応が遅れてもったいなかった」
自力に転じて抜け出した小林の後ろで、佐々木と平原がもつれて佐々木は7着。自身は後続を離して先頭のゴールも、地元ワンツーを結実できなかっただけに反省を忘れない。
「同期がどんどん活躍するなかで、自分だけ(G3優勝が)獲れなかった。やっと獲れて良かったです。ただ、やっぱり眞杉、森田と比べて自力が劣っている。もう1回しっかりと逃げの決まり手を付けて、(眞杉、森田と)前後が逆になっても、(前で)やらせてもらえるようにしたい」
同期で練習仲間の眞杉が、昨年は2度のタイトル奪取。もう1人の練習仲間でもある森田は、昨年9月にG3を優勝。2人に感化されて、昨年末から急成長を遂げた小林は、5月に日本選手権で初めてG1ファイナルに進出。地元のエースとして獲るべくして獲った記念だが、ここで満足はできない。G1ファイナルの大舞台で眞杉、さらに決勝は別線だった森田と連係。そのためにも歩みを止めるわけにはいかない。
最終1センターからまくり上げた平原だったが、小林の番手まくりに佐々木の横まで。両者がからんで、平原後位の佐藤慎太郎が追い込んだ。
「いいスピードだった。そういうレースのなかで、自分なりに対応できたと思う。平原君の走りは一ファンとしても、気迫を感じました。あそこの4番手に収まったのに森田君の自力選手としてのプライドも見えたし、ガチンコだった。(関東勢は)普段は敵だし、敵にすると怖いラインだなって思った」
森田の頑張りを無にしないためにも敢然とまくりを打った平原康多だったが、小林を脅かすまでには至らなかった。
「スタートを出ないと(眞杉に突っ張られた)窓場君の立場になるし、取りにいった。(森田は)緩んだらいくって感じだったけど、無理やり仕掛けてくれた。森田の気持ちのバトンをつながないとっていう思いだった。ただ、(まくった)自分のタイミングがすごい悪くて、コーナーの上りだった。佐々木君の肩より前に出られたので、そこで勝負だなと。(小林)泰正までは届かなかったです」