地元で貫録の完全優勝!!
今年の前半戦は腰痛に苦しみながら思うような走りができずにもどかしい戦いが続いていた印象の脇本雄太だったが、今シリーズは初日特選からハイラップを連発しての完全制覇。地元の絶対的なエースとして主役を全うし、4年ぶり6度目の地元記念制覇を初連係の弟の脇本勇希の番手からつかみとった。
「正直、ほっとしています。(脇本)勇希はレース前から緊張していたというか、スイッチが入っている感じだったので、その気持ちをくみ取ったレースをしないといけないので、思いのほか緊張しましたね」
地元記念は過去に5回の優勝経験のある脇本雄でも、地元記念で初めて兄の前を回る勇希の緊張感を察して、脇本雄自身も、いままでとは違うプレッシャーも感じていたはず。それでも弟を信じて、結果を出すことのみに集中した。
「S取りからやってくれたので、任せていました。ほぼほぼ正攻法からしか考えていませんでした。(赤板過ぎの)1センターぐらいで(新山響平が)いい感じできて、これは(勇希が新山に)負けるなと思ったけど、初日特選で寺崎浩平君と連係した時と同じような感じで、冷静に対処できました」
兄に前を任された脇本勇はライン5車の厚みを生かしてS取りからS班の新山を突っ張ろうと赤板手前から車間を空けて全開で踏み込んでいったが、打鐘手前で叩き切られてしまう。番手を回っていた脇本雄は北日本ラインを追走してきた山田庸平に締め込まれたが、慌てることなく冷静に対応して、山田の後ろに切り替えた。
「そこ(打鐘付近で締め込んできた山田の動き)も含めてうまく対処できたと思います」
新山がハイピッチで逃げていくなか、3番手の山田が最終2コーナーから先まくり。車間を空けて様子を窺っていた脇本雄に慌てる様子は一切なかった。徐々に山田との車間を詰めていきながら、山田が竹内智彦の横を過ぎた最終3コーナー付近からゴール線を目掛けて全開で踏み込んだ。
「あそこが一番チャンスだと思ったので。(山田)庸平さんなら竹内さんのブロックを乗り越えると思いましたし、その隙を自分がすり抜けようと思っていたので。そこも冷静でしたね」
初日特選は寺崎、決勝は弟の勇希に前を託してのレースで、後輩の成長もひしひしと感じ取っている。
「後輩たちも伸びてきているし、今開催もみんなのおかげで勝てたと思う。今度は機会があったら自分がサポートに回ることもあると思うので」
次走は平塚で行われるオールスター競輪。ファン投票で2位の脇本雄はドリームレースに出走予定だ。
「G1も獲りたいし、その先にあるグランプリに気持ちを入れて臨んでいきたい」
脇本雄にこそまくられてしまった山田庸平ながら、展開をしっかりと読み切ってベストのレース。新山を鮮やかにまくって2着に入線した。
「(新山)響平が力の違いで(脇本勇)を叩くと思ったし、展開は読めていました。人任せにはなってしまったけど、(別線が)モガき合ったところをどこまで行けるかって感じだったし、やりたいことはできた。まずは響平をまくれるかの勝負で、そのあとにワッキー(脇本雄)が来るかどうかだった。完全に力負けですね。単騎だからあの位置(北勢の後ろ)を回れたのもあるけど、ラインがあればおもしろい勝負ができたかもしれない。(今節は)走るたびに良くなればという感じで、思っていた通りになって、調整と自分の考えがうまく噛み合ったと思う。自分はすぐ体調を崩すので、そこは気をつけたい」
脇本雄の後ろを回っていた稲川翔は最終3コーナー付近からの強烈な加速に踏み遅れてしまい、懸命に追い掛けていったが3着に入るので精いっぱい。レース後は言い訳も一切なく、反省しきりであった。
「新山が強いのは大前提だったし、ああいう(脇本勇が叩かれる)のは想定していた。勇希もワッキーも役割を果たしてくれたのに…。全ては自分だし言い訳はないですね。これが続くと前を回れなくなってしまうのでどうにかしないと。ただただ自分が弱いだけです」