地元の主役がまくりでV
プレッシャーに打ち勝って地元記念を初制覇。ウイニングランでは小松島の熱烈なファンに何度も手を挙げて応えた犬伏湧也の笑顔がはじけた。
「地元っていう重圧もあって、いつもと違う緊張感のなかで走った。それで優勝できたんで、すごいうれしかった」
ホームでありながら、いつもとは違ったバンクの感覚。それでも仕掛けどころを見失うことはなかった。
「(周回中は)取れた位置からいこうと。あとは自分の行けるところからって。そこをしっかりと見極めてって思ってました」
信頼を寄せる小倉竜二とのタッグではあったが、ラインは2車。中四国地区のS級S班、清水裕友とは別線を選択した。それだけに獲るにはピンポイントでの仕掛けが要求される厳しい決勝だった。
「(新田祐大がまくって)吸い込まれる感じでいけた。それがあったんで上に行ったけど、届いたかなと」
3車の九州勢の先頭を務めた嘉永泰斗が風を切り、犬伏は最終ホームを8番手で迎えた。6番手の新田がまくると、そこを目標に犬伏は2コーナーから踏み込んだ。山田英明のブロックでイエローラインの外にまで新田が膨れて、犬伏はさらに外を踏み込む。大外を回されたが、直線の入口では渋滞になった内側の選手とのスピード差は明らか。2着の佐藤慎太郎に1車身半の差をつけてのゴールだった。
「ゴール前は必死で踏んだ。届いてくれって感じだった。ただ、ゴールでは1着かなっていうのはわかりました」
3人のS級S班を向こうにまわして、狙いすました一撃で地元記念をモノにした。
「地元記念で決勝までなんとか上がれて、地元の声援がすごかった。自分も興奮した感じです。今日(決勝)のレースはイレギュラーだったんで、G1でも自力を出してしっかりと勝てるように」
地元記念、今日だけは内容にこだわることなく獲りにいった。いつものスタイルを考えれば“イレギュラー”でも許されよう。
山田に大きく外を振られた新田のまくりが失速。あおりを受けた佐藤慎太郎だったが、そこから内に進路を取り、直線では中のコースをこじ開けた。
「犬伏も2車だから無理やりカマしてくるよりも、大事にいくかなっていうのはあった。新田のスピードが良かったし、2人でいい勝負になるなと思った。けど、(山田)英明に(新田は)いいブロックをもらっちゃいましたね。英明のブロックがなくて、自分が新田の外を踏んでいれば、犬伏の優勝もなかったと思う」
犬伏の加速に最終バック付近から置いていかれた小倉竜二は、3コーナーから巧みなコース取り。「2着にはいきたかった」と、悔やんだが、落車明けの現状をカバーするらしさで3着に入った。
「犬伏君の得意なカマシ、まくりにかけて、あとは自分がどんだけ付いていけるかだった。初日みたいなムダ駆けで(2人で)8、9着してもしょうがないんで。犬伏君なら誰が前でも、仕掛けたら上を乗り越えるスピードがある。自信をもたせていった。自分が番手だし、獲れる時は狙っていくのも。毎回、あれじゃダメだけどね」