地元勢の夢砕く完全V
初日から人気を背負っていた新田祐大。前に前にと動いて位置を確保する動きと、スピードを生かしたまくり4連発で期待に応える完全優勝を達成。決勝でも赤板過ぎで空いた内を見逃さずに進み、後手を踏まない姿勢を見せた。
「スタートは位置次第で何でもあると思っていた。ゴチャついている中で、片岡(迪之)君の動きを見過ぎてしまった。真鍋(智寛)君のラインが締まり気味になって難しいレースになりました」
前に前にと攻めた結果が、真鍋の番手で吉田智哉と位置を争う展開になった。そこからペースを上げない真鍋にプレッシャーをかける動きなど、レースの隅々に新田の駆け引きやテクニックが凝縮されていた。
「真鍋君がああ(内から自分が来る展開)は、想定していなかったのか、吉田君が(番手を)取られそうになって、そこでも流しているようなら(行く)意欲を見せてと。そうしたら、真鍋君に(先行する)スイッチが入ったかなと。そうなったからには(吉田と)勝負するしかない。結果、地元のところにいったので申し訳なく、動きとしても、後ろの2人に難しくなった」
逃げる真鍋の番手を奪取したあとは、自慢のスピードを発揮するだけ。最終2コーナーから一気に加速して真鍋をとらえ、先頭でゴールを駆け抜けた。
「後ろが誰かはわからなかったけど、2コーナーから全力で行って、(ゴール前は)福島(武士)君とのゴール前勝負に負けたくないと思って踏みました」
本来ならば、G1のオールスターに出場している選手。今年は全日本選抜の最終日に誘導員の早期追い抜きで3カ月のあっせん停止期間もあった。ここから先は予定されているレースはもちろん、ビッグ戦線で活躍するためにトレーニングを積んでいく。
「(優勝しても)ここがゴールではないし、オリンピックから強いメンバーが戻ってきて日本の競輪はまた一歩、変わると思う。そこで活躍できるように精進していかないと。次に(ビッグを)出られるとしたら競輪祭。まずは出場権を取ること、そこで活躍できるように頑張りたい」
地元の真鍋と吉田の連係は、新田の動きによって空中分解。地元の後ろを回っていた福島武士は、冷静に戦況を見ながら新田を追ってゴール前で迫って2着。今回は左鎖骨骨折から久しぶりのレースになったが、軽快な動きを披露した。
「(真鍋が)前から突っ張って、(新田が)来るとは思っていたので締めていたんですけど、仕方ないです。(最終)2コーナーで吉田が返ってきたら迎え入れるつもりだったんですけど、浮くような感じになってしまった。抜けるかなと思ったんですけど、(新田に)付いて行った時に一瞬バックを踏まされてしまった。やっぱり歴戦の走りでしたし、うまかったです。ただ、今回は新田にも付いていけたし、感覚は悪くなかったですね」
原誠宏はラインの結束力を見せて、四国4番手を固めてレースに臨んだ。難しい展開にはなったが、前の福島をしっかりと追走して3着。今月末までが選考期間の11月の競輪祭の出場権を獲得して、正規配分でG1初出場がみえた。
「どこかでは(新田が)来るとは思っていました。僕も空けて油断してしまったし、難しいところでした。吉田が新田と勝負をしてくれて、それで脚を使わせくれたし、ラインのおかげです。(状態は)徐々に良くなっていますね。(この3着で)正規でG1に出られるのは初めてで、練習にも気合いが入ります」