地元で今年2度目のビッグ制覇
ホームバンクの女神が、眞杉匠に微笑んだ。最終ホームではまさかの8番手に陥ったが、そこからはあっと驚く立ち回り。ミラクルなコース取りは、地元の眞杉だからこそだろう。
「(宇都宮バンクは)高校生の時から走ってたんで、それが出ましたね」
ヒーローインタビューで、眞杉はこう言ってはにかんだ。
「直前の練習が、本当にどうなっちゃうんだろうってぐらい良くなかった。深谷(知広)さんと寺崎(浩平)さんが来てたんですけど、(一緒に練習して)モガきでもちぎれちゃったりした。そこをなんとか修正できたなって感じです」
打鐘過ぎに先に古性優作が切って出ると、眞杉は無理すことなく下げた。しかしながら、そこを九州勢、南関コンビが仕掛けて、気づけば8番手。深谷は郡司の積極策に乗り、古性も前にいて絶体絶命のポジションだった。
「(打鐘過ぎの)あそこで(古性と位置を)取り合っても仕方ないので下げたら、後手を踏んでしまった。(最終)ホームではだいぶヤバいなって。前がどうなっているかあんまり見えていなかっんですけど、もうあそこで行かないと絶対に届かないと思った」
優勝を逆算したギリギリのタイミング。最終2コーナー手前で眞杉は踏み込んだ。
「(仕掛けて)行ったら行ったで、外は無理だなって思った。もうバックから内に行って、行けるところまでって感じで空いた。バックを踏んだら終わっちゃう。本当に運が良かったなと。(前が)だいぶいい掛かりだったので、抜けたらいいなというか、(抜けると)信じて踏み込んでいきました」
バック手前からは瞬時の判断、あろうことか南修二をすくって、古性を射程圏に収めた。まくりに転じた北津留を追った古性は、4コーナーから追い込む。そこまでに脚を使っていた眞杉だったが、最後の直線勝負で踏み勝った。投げたハンドルを引き戻すと、眞杉は素早く右の拳を突き上げた。
「今年はいろいろあって、始まる前から怪我してだいぶ出遅れてた。それで記念の準決とかで負けまくっちゃった。前半戦でつまずいてしまったけど、後半戦でなんとか立て直せて、グランプリに近づけたかなと思います」
年始には練習中に落車に見舞われて、S級S班ながらも不本意な走りが続いていた。だが、7月のサマーナイトフェスティバルで、今年のビッグ初優出を果たしてV奪取。オールスターでも決勝にコマを進めると、連続G2制覇で獲得賞金を加算。賞金ランクも6位までジャンプアップした。
「最近は逃げられていないので、ここからは去年みたいにしっかりと逃げたい。今年はまだG1を獲ってないので、G1を獲ってしっかりとグランプリを決められるように頑張ります」
昨年5月に地元記念を制した眞杉が、S級S班になっての凱旋シリーズで地元ビッグを制覇。関東のエースの勢いは、年末に向けてここからさらに加速していく。
結果的に自力に転じた北津留のまくりを追いかける形になった古性優作は、まくり切った北津留と直線勝負。北津留の抵抗に手こずったのか、伸びは一息だった。
「どの位置になっても、1回は自分で動いてレースを動かしたかった。荒井さんのところにいくのはまったく考えていなかったですね。バンって踏んだのがそこだった。(3日目からレーサーパンツを換えて違和感があって最終)4コーナーでもう1回座り直す感じでした。昨日(3日目)よりはマシでしたけど。力不足です」
眞杉のトリッキーな動きに反応が遅れたところもあった恩田淳平だが、眞杉を完全に見失うことなく食い下がる。直線では懸命に外を踏んで、初めてのビッグファイナルで3着に入った。
「後手を踏んでも、眞杉がチャンスあるようにイメージして仕掛けてくれればって思っていた。初めてのG2決勝でしたけど、準決よりいい集中力だったと思います。でも、すんなりの番手で離れてしまったのは初めてかなっていうぐらいなので、もうひと脚上げていかないと。(最終)1センターで離されながらも追いかけていった。結果は3着で良かったですけど。南さんが降りそうなのが見えていたので、そのままピッタリ付いていかないと」