近畿同士で力勝負に
現行のバンクで行われた最後の平安賞。3車勝ち上がった近畿勢は、窓場千加頼、山田久徳の地元勢と、脇本雄太で別線勝負を選択した。地元勢の勝ちたい想いは、脇本にも痛いほど分かる。だからこそ、全力を尽くすことが、礼儀だった。
「別線になった以上は、自分の力を出し切ることだけに集中しました。取れたところから、しっかり仕掛けようと。武藤(龍生)君が中団を取ってくれたので、少しやりやすい並びになりましたね。(打鐘で)松谷(秀幸)さんの(内をすくった)動きで、行くタイミングを見失った。けど、ホーム線くらいでは、しっかりと行けたかなと思います」
5番手の窓場が、最終2コーナー過ぎから先まくりに出るが、ホームから加速した脇本は、その上をまくり上げていく。清水をまくり切った窓場が、先頭で直線へ。大外を猛襲した脇本と、窓場の際どいゴール勝負は、8分の1輪差でとらえた脇本の勝利。お互いの力と力をぶつけあった、大熱戦だった。
「(窓場に)ヨコに当たられたら負けるなとは思ったけど、とにかくタテに踏み切ろうと。熱い勝負を見せられたら良いなと思ってました。(窓場)千加頼と、ゴール勝負ができたのが嬉しかった。持てる力を出した上での勝負で、ゴール勝負ができたのが良かった」
福井記念以来、通算16度目のG3制覇は、近畿の後輩との力勝負で勝ち取った。自身が出場した平安賞に関しては、これで3連覇。当所は、脇本にとっても思い入れが深い。
「向日町記念の決勝は、いつも近畿でワンツーだなって思ってた。それが、今回は別線でもワンツーだった。力勝負で、最高の結果になったんじゃないかなと思います」
これで賞金を加算したが、グランプリ出場へは当落線上にいることに変わりはない。気を引き締めて、近畿の仲間たちと共に次の戦いへと向かう。
「今の自分の立ち位置はボーダーなので、1勝、1勝が大事になってくると思う。目の前の一戦をとにかく後悔しないようにですね。古性君や、千加頼は本当に力があると思う。僕自身、そこに付いていけるように頑張りたい」
大規模な施設改修で、向日町競輪場の姿かたちは変わる。現行バンクでの最後のレースは、語り継がれるべき名勝負だった。
窓場千加頼は、悲願の地元Vにあと一歩届かず。悔いはなくとも、悔しさがこみ上げる。
「良いレースをしたいと思っていたし、力勝負を見せられたのは良かった。すごい熱気で、本当にオールスターと変わらないくらいのお客さんの声援だった。その中で、落ち着きつつ、チャンスをモノにできるようにと思ってた。清水君の出方次第で、先行もありつつ考えていて、あれ以上ピッチを上げると、脇本さんが中団で清水君が後方になると思った。ギリギリのところで清水君が来たので、中団という判断でした。ああなれば、単騎勢が切れ目を回ってくるし、松谷さんが見えた段階で、早めにまくりにいこうと。まくり切れたんですけど、結果的にオールスターの二の舞というか。やっぱり悔しいです」
脇本マークの武藤龍生は、脇本と連結を外すが、態勢を立て直して内に進路を取る。直線は中のコースを突っ込んで、3着までリカバリーした。
「スタートは出てみて取れたところからって感じでした。ジャンの所で、松谷さんが内をしゃくってきた動きは脇本さんは影響なかったと思うが、自分はあの動きが効きました。脇本さんがいくだろうなって思っていたけど、力み過ぎてしまった。今までは相手としてどうやって倒そうかって考えていた人で、いざ付いてみて初連係って所もありましたけど、力み過ぎて離れてしまった。そのあとは脇本さんを追いたかったけど、かなり外を踏んでいたし、そこは追っていけないと思って内だなと。コースを縫いながらって感じになりました。自分でもよく3着まできたなと思う」