最後方からの強襲劇
そうそうたる顔ぶれによる細切れ戦を制したのは単騎の犬伏湧也。最終バックでは前までが遠い9番手からのどんでん返しだった。
「まさかこういうメンバーで優勝できると思わなかったんでうれしいですね」
小林泰正が押さえたところを、眞杉匠が打鐘3コーナーで飛び出して駆ける。古性優作が5番手、新山響平が7番手の一本棒で、犬伏は動けずにいた。
「眞杉君のペースがすごい上がっていた。ラスト1周で仕掛けられるスピード感ではなかった。(先行した眞杉が)掛かっていたんで、これはキツいなって思いました」
3番手の小林が最終2コーナー手前で仕掛けたの皮切りに、新山、古性が次から次へとまくりを打つ。3コーナーを過ぎると3、4車が併走になり、隊列が凝縮され、犬伏にもチャンスが訪れた。
「(最終)バックくらいで新山さんが仕掛けてくれたんで、それに乗っていった。スピードが上がっていたんで、ただただ新田(祐大)さんの後輪に集中しながら付いている感じだった」
小林は不発。直線の入口で古性が前団をとらえるが、新山の勢いがいい。新山が大阪コンビをつかまえたと思ったのもつかの間、黄色いユニフォームが矢のように大外を突き抜けた。
「最後にゴール前で踏める脚を残しておこうって、脚を削られないように意識していました。(最終4)コーナーの下りに向かって力いっぱい踏めた。思いのほか伸びたんで、これなら前までいけるかなって。ただ、理想はホームでカマシ、まくりっていうのが頭にあった。それができていない。スピードレベルを上げていかないと」
7月の地元、小松島以来、今年2度目の記念Vで今年のラストG1、競輪祭に弾みをつけた。
「去年の競輪祭は賞金ランクで惜しいところまではいったけど、(一次予選で)あっけなく終わった。まだまだグランプリはあきらめていない。(獲るしかないので)潔くやれると思います」
昨年は獲得賞金ランク11位で競輪祭を迎えたものの、一次予選の2走を着で散った。今年は“大逆転”でのグランプリ出場。犬伏には獲るしかない状況を楽しむだけの余裕がある。
眞杉にフタをされて7番手に置かれた新山響平は、新田が踏み出しで遅れるほどの加速力で前団に迫ってまくり切る。が、最後は犬伏に屈した。
「(眞杉に)フタをされていたので、(眞杉が)早めに切りに行ってくれれば良かったけど。切らなかったので、眞杉が踏むのを待つしかなかった。(古性が前にいたのは)考えずに自分のタイミングで詰まったところで踏めるかなと。雨で前が見づらかったですね。(最終3コーナーは)浮きそうなところで外を我慢して、4コーナーで伸びるかなと。犬伏が強かったです」
3着は大阪コンビが分け合って同着。5番手の古性優作は、先にまくりの小林ラインに車間を空いてからのまくりになった。
「弱いですね。力不足です。シンプルにしんどかったです。どうしようもなかったですね。今日(最終日)が一番しんどかった」
4車横一線のゴール勝負まで持ち込んだ南修二は、こう振り返る。
「展開は良かったと思うけど脚がなかった。弱いですね。トレーニングをするしかない。(そのトレーニングは)変化を求めてやっていて、いい方向に向く時もあるし、思うようにいかない時もありますね」