チャンス逃さず2度目の地元記念V
ラインの結束力が、願ってもない展開を生んだ。盤石の態勢を築いた松本貴治は、それに応えた。
「犬伏(湧也)君が頑張ってくれて、最高の結果になった。それがうれしいです」
四国勢が前団に構えてレースを進める。赤板で山崎芳仁を突っ張った犬伏に迷いはなかった。
「(自分たちが)突っ張られるよりは、前を取って力を出し切って突っ張った方がいいっていうのがありました。打鐘くらいから(犬伏は)いい感じで踏み上げていってくれた。すごいうまかったですね」
一度も先頭を譲ることなく、犬伏が敢然と風を切りレースを支配。7番手になった深谷知広は、動けないまま最終ホームを迎える。松本は別線の反撃に備えて、逃げる犬伏との車間を取った。
「犬伏君が掛かっている上を深谷さんが来た。自分も出ていく準備をして、(深谷を)張りながらでした」
詰める勢いで深谷のまくりを外にけん制した松本は、そのまま踏み込んで直線の入口では先頭に立つ。再度、迫ろうとする深谷を1車身ちぎる完勝のゴールだった。
「道中、余裕があったんですけど、踏み出してからは気持ちの面か、重い感じがあった。ラインのおかげで一番いい結果に終わって良かった」
後ろを3人が固めた二次予選を除いて、3走が番手回り。ラインの盛り立てがあったからこその2度目の地元記念Vを結実。7月佐世保ミッドナイト、11月の防府記念に次いで、今年3度目のG3制覇。並みの選手にできる芸当ではない。
「前の選手が頑張ってくれての結果なので。防府は自分で動いて獲れたけど、自分で動いて獲れるように。(今年1年)G1ではまだ全然、戦えてないので、もっと総合的に底上げしたい。G1で優勝をすることが目標なので」
G1優出は、初めてだった昨年のオールスターから遠ざかっている。今年はファイナルの舞台を経験することなくビッグ戦線が終わっただけに、期するものがあるのは当然だろう。今年のラストは、グランプリシリーズの静岡。最高潮に盛り上がる年末の舞台で、松本が来年につながるパフォーマンスで締めくくろう。
打鐘過ぎの一度目のタイミングを逃した深谷知広だったが、最終2コーナーからのまくりで強襲。松本には並べずも、落車明けのシリーズで力は見せた。
「(スタートで中団を取ったのは、四国勢に突っ張られるリスクを)考えてでした。(仕掛けて)行くならそこ(打鐘過ぎ)だった。そこを行けなかったんで、早めにまくりにいこうと。(松本が番手から)出るのはわかっていたし、どう越えるかだった。力負けですね」
地元ワンツーこそならずも橋本強は、3番手の役目を果たして3着。シリーズを通して、前回の競輪祭とは違う上々の動きだった。
「山崎さんが中団だと思ってて、そこが想定外だった。突っ張らないと、合わされて浮いて、初日みたいなことになったら面白くないと思ってた。深谷を突っ張ってていうのが理想だったけど、結果一緒のような形になりましたね。(松本が車間を最終)1コーナー過ぎから空けだした。深谷が来て、張った時に一気に深谷が止まった。自分も、内を空けたらしゃくられるし、難しいところだったけど伸び負けた」