番手まくりで5年振りのG3制覇
山崎芳仁
思いのほか、単調な流れだった。それだけに山崎芳仁は、難しい判断を迫られた。
「(高橋晋也は最初に)来たラインだけ突っ張ってでした。そしたらあとは誰も来なくて。あまりにも(高橋が)ペース過ぎた」
青板3コーナーで誘導を降ろした高橋晋也が、和田真久留の上昇を阻んでペースを握る。和田は結局、8番手に出戻って、そのままレースは流れる。3番手で車間を空ける佐々木豪、5番手の篠田幸希ともにアクションはなく、同県の後輩、高橋は先行の腹を固めてそのままペースを上げる。が、ラインは2車。山崎の後ろには、四国勢が虎視眈々とタイミングをうかがっていた。
「(佐々木が仕掛けてきて)あれで自分が出ないと、小倉(竜二)さんに入られる。佐々木が強いのはわかっているんで。踏んだ瞬間、ググって合わせて、そのまま前に踏んだ感じです」
3番手まくりの佐々木に合わせた山崎は、最終2コーナー過ぎから番手発進。33バンクの半周の勝負なら、後続に脅かされることもなくゴールを先頭で駆け抜けた。
「今回は前に助けられた。自分の力じゃなくて、ラインに助けられた。もう年齢的に強くなるって言えないので、こういう時が来た時に(チャンスをモノにできるように)しっかりと練習したい」
今年最初のG1、2月の全日本選抜では盟友、成田和也とのタッグでラインの先頭で奮闘。それだけに、まだまだグレード戦線でも通用する機動力は持ち合わせている。しかしながら、ビッグも含めたグレードレースの優勝は、20年1月の平記念以来、5年以上ぶりだった。前橋は08年に寬仁親王牌、12年にオールスターを制し、山崎にとってはゲンのいいバンクでもある。
「あの時も後輩(渡邉一成、新田祐大)の番手だった。今回もそうだし、後輩に助けられてきた人生ですね」
9度のG1優勝をこう振り返った山崎は、グランドスラムがかかる日本選手権が4月29日から待っている。
「(26年に平でのグランプリ開催が決まった)そういうのはありますね。時代がタイムスリップしてくれればいいのに(笑)。でも、G1にも出られるし、あきらめてはいない」
終わってみれば、小倉竜二とタイトルホルダー2人のワンツー。修羅の道をくぐりぬけてきた男たちが、格の違いを見せたG3だった。
佐々木のまくりが山崎に合わされ、小倉竜二は最終バック手前で和田の進路を阻んで内に降りる。さすがの立ち回りも、山崎との差は思うように縮まらず2着まで。
「(佐々木は)ジャンからホームにかけて行くタイミングはあったけど、うまくペースにハメられたね。(最終バック付近では)和田が内に来ていたし、(佐々木も)出ていない感じだったので割り切った。それにしても(山崎が)強かった。ゴール前が一番、掛かり切っている感じだった。スローから一気に上がっていったね。(落車明けの今シリーズは)全部2着以内だし、まとめた方、上デキです」
和田真久留は周回中、8番手。高橋に突っ張られて再度、後方待機も、別線に動きがなく内を押し上げての3着が精いっぱい。
「突っ張られるのはある程度、想定していた。そこから引いて、あとはほかのラインが仕掛けるんじゃないかと。自分が3番手か5番手だったら、(仕掛けて)行くところは腐るほどあったんですけど…。あとは(内を行けるところまでいって)エックスっぽく入っていったんですけど、佐々木君のところまでいけたらおもしろかった。各々の自力がハイスピードで勝負して、もう少スッキリしたレースがしたかった」