• 名古屋競輪場 第79回日本選手権競輪4/29〜5/4

後記 GⅠ 名古屋 04/29

盟友とのタッグで2度目のG1制覇

吉田拓矢

吉田拓矢

決勝優勝写真
決勝優勝写真
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 「まだ実感がわかないですね、眞杉(匠)に感謝しかない、本当に」
 単騎で初めてタイトルを獲得した21年11月の競輪祭から、3年半の歳月が過ぎていた。107期として15年にデビュー。若手として関東を引っ張ってきた吉田拓矢だったが、気がつけば30歳の節目のバースデーを3日後に控えるまでになっていた。一昨年のオールスターでは、眞杉をタイトルホルダーに導く積極策も、暴走により失格。ペナルティとして4カ月の戦線離脱の苦汁もなめた。
 「(一昨年のオールスターの)あれから眞杉もずっと僕のことを気にかけてくれていた」
 その年は、オールスターに次いで、競輪祭も奪取した眞杉にも、どこかスッキリしない気持ちがあった。それだけにG1ファイナルで初めてのワンツー劇は、互いに胸のつかえが取れた思いだろう。
 レースは、北日本勢が前団を占めて、新山響平が突っ張り先行。単騎の古性優作が4番手を確保して、眞杉は5番手で前との間合いを取る。先行態勢の新山は、最終ホームからペースを上げて駆ける。
 「スタートも全部、眞杉がやってくれた。自分は付いていくだけだった。(新山は)すごいピッチだった。でも、眞杉が車間を空けていたので、これは一気に行くんだろうなと。そこだけ離れないように集中して、(眞杉の)車輪だけを見ていました」
 詰める勢いで、眞杉が最終バック付近から前団に襲い掛かる。3コーナー過ぎに古性の横を通過した吉田は冷静だった。
 「(眞杉は)結構、空けていて、これは行けるのかなって思ったんですけど、強かったですね。自分は3コーナーの登りだったんで、なるべく外を踏んだ。掛かりがすごかったんで、そんなにみんな横に動く雰囲気でもなかった」
 直線の入口で前団をのみ込んだ眞杉だったが、後輪が菅田壱道と接触。吉田が眞杉を交わして2人で上位入線も、菅田の落車で眞杉は審議対象。自身のG1制覇よりも、盟友のことが気がかりだった。
 「眞杉が締めているのがわかった。落車があって眞杉が失格だったら、また(自分が失格した)オールスターの時みたいな感じになっちゃうと。それだけは嫌だと思って、自分の確定より眞杉が失格してないかが気になりました」
 セーフ判定で眞杉とのワンツーが結実。これ以上ない2度目のG1優勝になった。
 「(競輪祭を獲った)前回は忘れちゃいました(笑)。(眞杉は)全日本選抜も頑張ってくれたし、今日(決勝)も勝負権があるところまで連れていってくれた。仲間に助けられて勝った。うれしいですね」
 単騎だったG1初優勝を忘れるはずもなく、吉田はこう振り返った。眞杉は2月全日本選抜の決勝でも、吉田を連れて先行策。その気持ちに結果で応えることはできなかったが、関係性はより深まっていった。
 「(眞杉とは)本当に、上下関係がないような。向こうもなんでも話してくれるし、そういう間柄ですね。今回、獲らせてもらったんで、こういう前後で走れるように、僕がもっと強くならないといけない。自信をもって眞杉の前を回れるようにならないといけない」
 かつての平原康多、武田豊樹がそうであったように。2人が流れを受け継いで、関東を盛り上げていく。

 5番手まくりの眞杉匠は、菅田との接触でスピードが鈍ったが2着。
 「(接触して)ブレーキがかかりました。(吉田との)ワンツーはうれしいけど、あの展開をモノにできずに悔しい。あれで一気に止まってしまった。でも、本当に(吉田)拓矢さんに獲らせてもらったから、いまがあるんで、そこは良かった」

 すんなり4番手の古性優作だったが、仕掛けられず最後はアクシデントを避けて3着。「めっちゃ迷いました」と、言うように、逡巡しながらのレースになった。
 「ジャンで菅田さんのところに追い上げるか。(阿部)力也さんとハウス(接触)して、新山君が駆けていった。それで口が空いて結構、脚にきた。ふさわしくないっすね。日本選手権に。力不足です。年々、キツくなってきています。まだまだ3歩、4歩、5歩、ちょっとじゃない差がある」

Race Playback

レース展開4
 直線で鋭く追い込んだ吉田拓矢選手が、眞杉匠選手を交わして優勝。眞杉選手が2着、単騎の古性優作選手が3着。

レース経過

誘導員 : 水谷良和

 号砲が鳴り響くと古性優作、眞杉匠、阿部力也、菅田壱道が飛び出し、菅田が誘導員の後ろを占めた。初手は新山響平-菅田-阿部、古性、眞杉-吉田拓矢、浅井康太、松井宏佑-岩本俊介の並び。 青板周回の2コーナーで早くも松井が上昇開始。松井は新山に並びかけたが、突っ張る気満々の新山も応戦。赤板で誘導員が退避すると同時に、新山が松井を突っ張り切って主導権を握る。松井はズルズルと後退し、新山-菅田-阿部、古性、眞杉-吉田、浅井、松井-岩本の一本棒でジャンが入った。ミドルペースで駆けていた新山に対し、後続からの仕掛けはなかったが、最終ホームを迎えると、新山はぐんとペースを上げて本格的に先行態勢に入った。新山は快調なペースで駆けていたため一本棒の態勢が続いていたが、最終バックで5番手の眞杉がスパート。眞杉は素晴らしい加速でぐんぐんと前団に迫る。直線の入り口で新山をとらえると、菅田が眞杉の後輪に接触して落車。眞杉にきっちり続いていた吉田が、ゴール前で眞杉を交わして日本選手権初Vを達成。眞杉が2着に粘り栃茨ワンツー。3着には古性が入った。

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