• 京王閣競輪場GⅢナイター7/14〜7/16

後記 GⅢ 京王閣 07/14

単騎で機敏に立ち回る

和田健太郎

和田健太郎

決勝優勝写真
決勝優勝写真
決勝優勝写真

 泥臭く、前々に。最後はズバっと、差し脚を伸ばす。「持ち味は出せたかな」。和田健太郎は、会心の総力戦を、照れくさそうに振り返った。
 見合ったスタートから、まず前に出たのは単騎の中釜章成。中釜が誘導を追わずにいると、和田が前に出て誘導を追いかけた。その後、上昇した九州勢を迎え入れて、和田は3番手からの組み立てとなった。
 「(スタートは)中釜君が出たから追ってほしかったけど、(前を)取らないなら僕が取った方が並び的に良いと思ったんで、(誘導を)追いかけました。初手は思ったのと違くて、吉田(有希)君達が前受けして突っ張る感じかなと思ってた。意外な並びだったけど、あとは臨機応変にって考えてました」
 山口多聞が、中団の吉田にフタをしてから打鐘手前で前に出る。九州勢から切り替えて、追い上げを狙った和田だが、一瞬反応が遅れて外の吉田と、内の田中誠に包まれる形に。ただ、そこからが和田の真骨頂だった。4コーナーで田中を決め込むと、山崎が最終ホームで内を空けた隙を見逃さなかった。内から山崎をどかして、最終的に先行の3番手を手中に収めた。
 「(埼玉勢が叩いた)3番手をきれいに取りたかったんですけど、アンコになってしまった。田中君が遅れ気味だったんで、そこをしのいで、(山崎)賢人が瞬間的に空けた内を行けた。なんとか、結果的に思ってた位置が取れました」
 吉田は前を叩けず後退し、自力に転じた寺沼拓摩がまくりを放つ。山口の余力を見極めた藤田周磨が、3コーナーから前に踏み込むと、和田は迷わず内のコースを突っ込む。内から藤田を差し切ったところが、ゴールだった。目標不在だった準決勝を、ラインの先頭で突破して、決勝戦も、選択肢があるなかで単騎戦を選んだ。総力戦でつかんだ優勝は、値打ちが高い。
 「単騎はタラレバだけど、(優勝は)嬉しいです。優勝できると思ってなかったし、G1とか関係なく、次のレースに向けて何か得るものがあればと思って自分でやった。昨日(2日目)は、新田(康仁)さんを付けてまくれなくて悔しかった。自分で前々にっていうのが理想だったけど、今日も最悪まくりに行こうと思ってた。けど、(準決勝と)似たような展開になった。それでも、最後まで持ち味は出せたと思います」
 前回の地元、松戸F1から、連続優勝を飾って、最高のリズムで次走の函館オールスターへと向かう。頼もしい南関の仲間と共に、G1の舞台へ乗り込んでいく。
 「同県の岩本(俊介)がS班ですし、郡司(浩平)や、深谷(知広)、(松井)宏佑もいる。付いていくのが大変なんですけど、そこをしっかりと追えるように。お客さんは、グレードとか関係なく、その1レースを買いに来ていると思うので、苦しい展開でも、3着までに入れるように、必死でやっていきたい」
 平塚グランプリを制したのが、30代ラストの年だった。「こんなおじさんが勝って申し訳ない」と笑うが、44歳を迎えた和田は、あの頃となんら変わらない。むしろ、アグレッシブなレースからは、若々しさすら感じる。目の前の一戦一戦を積み重ねて、再び大舞台へと返り咲きを目指す。

 山口とのタッグで挑んだ藤田周磨は、あと一歩のところで初優勝を逃してしまった。悔しそうに、こう振り返る。
 「夢見ました。山口君の組み立ては完璧だったし、頑張ってくれた。後ろの状況が分からなくて、けん制も大きくならないようにしていたけど、和田さんは見えてなかった。出ていくのもまだ早いなって思って一回見てしまった。獲るイメージができていなかったし、経験不足です。獲りたいっていう気持ちの覚悟が足りなかったです」

 単騎の中釜章成は、最後方からまくったものの3着まで。
 「情けないです。2コーナーでドリフトしました。優勝したかったけど、無理でしたね。関東勢が前を取るかと思ったけど、あの展開で獲れなければ(優勝は)夢ですね。3日間通して良くなかった。気持ち一本で戦っていました」

Race Playback

レース展開4
 山口多聞選手が別線を完封して逃げ、藤田周磨選手に絶好の態勢になったが、3番手に切り替えていた和田健太郎選手が中を割って逆転V

レース経過

誘導員 : 柿本大貴

 号砲で中釜章成、和田健太郎の単騎の2人が出ていく。正攻法の位置を確保した和田は九州勢を入れて、山崎賢人-田中誠、和田、中釜、吉田有希-寺沼拓摩-鈴木玄人、山口多聞-藤田周磨で周回を重ねる。 青板3コーナーから山口が上昇。山口は吉田の外で併走してから、赤板を過ぎてさらに踏んでいって2コーナーで山崎を叩く。山崎は引き、追って上がってきた吉田と3番手がモツれる。吉田は最終ホームから山口を叩きに行くも、ペースが上がっていて1センターで外に膨れて後退。目標を失った地元コンビは外を踏んでへばり付き、逃げる埼玉コンビの後ろは山崎の内をすくって和田が続く。最後方でジッと脚を溜めていた中釜が地元勢に切り替える形から3コーナーで外に車を持ち出してまくるも3着まで。快調に逃げた山口の後ろから藤田が抜け出すが、両者の中を割って和田が逆転した。

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