冷静沈着に好機つかみV
松浦悠士
「今節はラインのおかげだった」
落車禍でまだまだ完ぺきではないコンディション。松浦悠士は、こう言って骨身に染みるようにシリーズを振り返った。初日特選は、中四国勢が大挙4人が顔をそろえた。初日は中国、四国に分かれて、清水裕友とのタッグ。その後は松本貴治との連係から二次予選をクリアして、昼田達哉との準決では薄氷を踏む思いの3着同着。ツキもあっての優出だった。
「(周回中の)並びはすごく良かった。僕たちが後ろで、九州勢が前になると思っていた。あの並びになったら、九州にフタをしてという感じだった」
4車で結束した地元、九州勢が3番手以降を占めて周回中の隊列が整った。7番手の犬伏湧也は、青板手前から早くも上昇を始めて3番手の北津留翼に併せ込む。北津留も引かずに、そのまま3番手で併走。赤板1センターで坂井洋が、上がると誘われるように北津留がインを進出するが抜けきれない。そのタイミングを逃すことなく、犬伏は2コーナー手前から踏み込んだ。
「(犬伏は)もうちょっと引きつけてからドンって行っても良かった。けど、フタをするタイミングも良かったし、叩くタイミングも上手でした。(犬伏の掛かりは)すごかった」
犬伏が主導権を握って、松浦も危なげなく続く。しかしながら、真後ろには中四国コンビに照準を絞るように無傷で勝ち上がった稲川翔がいた。懸命に巻き返した北津留だったが中団で力尽きる。最終2コーナーで自力に転じた荒井崇博に合わせて、坂井もまくる。坂井のまくりが稲川の横まで迫ったところで、松浦は前に踏み込んだ。コースを突いた佐々木龍が詰め寄るも、松浦を脅かすことはなかった。
「前の3日間の僕のデキが悪かった。その分早めに踏んでしまったのが悔いが残ります。踏み切れたけど、後ろから食われる感じもあって、自信があってのゴールではなかったです。今日(決勝)は詰まる前に踏んじゃった」
平原康多の引退で7月1日にS級S班に復帰した松浦だったが、たび重なる落車に襲われ万全とはいうにはほど遠かった。それでもラインの力と自身のコンディショニングでG3優勝までたどり着いた。
「(セッティングは)同期の三浦翔大君がずっと付き合ってくれた。結局、(最終日に)車輪自体を換えた。ただ、この車輪は来年以降使えなくなるので、そこは試行錯誤は必要ですね」
自身のデキを逆算してのV獲り。約1年ぶりのG3優勝にホッとしたように一息つく松浦だが、このあとは伊東記念、さらにはリニューアルされた地元、広島での記念が待っている。
「(落車の怪我も)良くはなっているんですけど、本当に少しずつです。思っているようには、上がってこない。自力でやる脚力は、まだまだですね。でも、開催中に(状態を)いいところまでもってこられたのは良かった。今回は追加で来て、自転車の不安はなくなった。広島記念に向けて、400バンクで結果が出たのは良かったです」
連覇、そして5度目の広島記念制覇に向けて、足がかりをつかむV奪取。師走になって遅すぎた軌道修正でも、松浦にとっては大きな優勝になろう。
坂井マークの佐々木龍が、最終3コーナーで俊敏に稲川のインに潜り込む。松浦後位に入って直線勝負も2着まで。
「犬伏君がああいう形で(九州勢に)フタをしてくれて、地元勢を後方に置く形になった。結果、良かったと思います。(坂井は)頼もしいですね。(打鐘過ぎからは)自分はキツくて、車間が空いちゃった。ああいうところは隙を与えちゃいけないし反省です。イナショーさん(稲川)がちょうど(最終)コーナーの入り口で振った。決勝だし、内が空いたら入っていこうと思ってた。そこの反応は良かった。(松浦をとらえ切れなかったのは)脚の違いだと思う。そこが優勝に届かない部分ですね」
角令央奈は、九州ラインの4番手。前の3人が外に浮いたものの、角は佐々木のコースをなぞるように3着に入った。
「佐々木君がつくったコースに付いていけた。(九州勢では)僕が脚を一番使っていなかった。欲を言えば2着まで行きたかった。佐々木君の内もあったし、外でもいいなと思ったけど、稲川さんとからんで失速しましたね」