ピックアップ GⅠ 松戸 04/30
脇本雄太が、86年の滝澤正光(千葉・43期、引退)以来、7人目となるダービー完全優勝。脇本同様に20年の東京五輪メダル獲得を大きな目標に掲げ、ナショナルチームでともに汗を流す新田祐大、深谷知広は、今シリーズ、脇本を脅かすまでには至らなかった。脇本“一強時代”がさらに色濃く感じられた令和に改元され、初のG1シリーズだった。
「深谷君は一番スピードを持っているので、敵として一番脅威かなと思っています」と、決勝で脇本がもっともその動向を気にかけていた深谷知広は、単騎でまくり不発のシンガリ負け。しかしながら、シリーズ着の準決では逃げ切りでの白星と、五輪に向けたトレーニングでの進化を垣間見せた。
「(決勝は)単騎だったので、自分のなかで余計なことを考えてしまった。悔しいです。まだ、まくりにいく感覚が…。いい経験になりました」
前回の川崎ナイター記念が、19年の初場所だった深谷。実戦慣れの上積みはあったものの、久々のタイトルには届かなかった。
正月シリーズの立川記念Vと初のS級S班で幸先のいいスタートを切った清水裕友だが、続く全日本選抜で落車に見舞われた。鎖骨骨折を負い今シリーズが復帰3場所目。松浦悠士との息の合ったコンビプレーで準決を逃げ切り、復調をアピールした。「悔しいですね、一瞬…」と、準Vで初のG1制覇に一番近づいた決勝は、十分な見せ場をつくった。
「特選にちょっと状態がいいかなって思って、(4日目のゴールデンレーサー賞で)ちょっと思い切って仕掛けてみた時に、先行でもいけるんじゃないかなっていう手応えがあった。それで準決も、腹をくくれましたね。ただ、決勝は(脇本に)脚の違いを見せつけられた。次、ああいうチャンスがあるとは限らないんで…」
自力での2勝を含む3連対の吉田敏洋は、新車を投入して実りのあるシリーズだったに違いない。
「自転車がマイナーチェンジした新車だった。ただ、そのマイナーチェンジがいままでやってないことだった。(今回は)そこまで自分に期待をしてなかったけど、なんとかいい方向に修正できた。いいイメージで(自転車を)調整してきた。でも、結果を残してなかったら、ただの負け惜しみになるんで。これで楽しみな材料が増えたし、方向性も見えた」
着でシリーズを終えた稲垣裕之は、意外なワードを口にした。
「(シリーズ中の)自力と人の後ろの切り替えには、迷いがないんですけど。あとは展開の判断ですね。どっちもできる自転車の乗り方をしている。先行もできる“自在”。回った位置での仕事をやっていかないと。だから、“自在”っていうのが求められる」
単騎ながらも奇襲のロングまくりでS級通算300勝を一次予選で飾った伊勢崎彰大は、その後も魅せる立ち回りで地元ファンを沸かせた。地元の大舞台が伊勢崎にキッカケを与えた。
「次に地元のG1をいつ走れるのかわからないし、しっかり力を出し切ってアピールしようと思ってました。一次予選は自分の力を信じて強気に走りました。勝負して負けたら納得がいきますから。それだけの練習はしているんで。吉田(拓矢)君が落車したけど、それがなくても勝てていたと思います。タイムも良かったし、自信になりました。最近は原因不明のスランプだった。いろんなトレーニングに取り組んでいたけど、それがかみ合わなかった。周りからも踏ん張りどころと言われていたし、寒いのは苦手だから暖かくなれば良くなるんじゃないかと。今回はここ1、2年で一番、調子が良かった」
“令和婚”で5月1日に入籍の近藤隆司は、勝ち上がりに失敗も地元で2勝を挙げて自らに花を添えた。
「4走とも同じ自転車ですけど、指定練習ではフレームを換えて試したりもした。それで(実戦で使っている)これが一番いいっていうのを感じたし、迷わずにいけた。来月(5月31日を初日とする開催)から誘導が速くなる。これまでフレームの角度規制、ギア規制とルールが変わることが自分にとっていい方向に働いた。今度の誘導が上がるのも、自分にとってはうれしい。新しいルールで勝てる戦法を見つけていきたい」