ピックアップ GⅢ 久留米 10/06
久留米競輪場で代替開催されるのは8回目を数える今年が最後となる開設73周年熊本記念。S級S班が5名参加するなど超豪華なメンバーによってシリーズは争われたが、地元熊本勢の気持ちが優った。4人が決勝に勝ち上がり、見事な作戦を実らせて中本匠栄がVを飾った。思いをつないできて来年6月にはいよいよ熊本競輪場が再開される。
「今年こそ決勝へ」。目標高く地元記念に挑んだ松本秀之介がまさかの一次予選で敗退。2日目は後方からまくり上げるも最終2コーナーで接触した際に前輪を破損してシンガリ負け。終わってみれば3日目の一般戦での白星のみと悔しさを噛みしめる結果となってしまったが、気持ちはすでに前を向いている。
「前回までの開催がずっと良くなくて正直、不安だったので。直前に焦って練習をやり過ぎたのが良くなかったですね。ここに向けての持って行き方が良くなかった。追い込み過ぎましたね。記念の一次予選で負けたのが初めてでしたし、2日目こそ頑張ろうと思っていたんですけど前輪が壊れて…。完全に空回りですね。メンタル的にも結構きつかったですけど、しっかり4日間走り切ろうと思って頑張りました。来年こそ自分も決勝に乗れるように。本当に悔しかったですけど、来年に向けて次の開催からしっかり戦っていけるように。いいレースを続けていきたい」
今期の競走得点は97・52。S級残留に黄色信号が灯っていた小野大介の心に火が付いた。初日の一次予選は田口勇介のまくりに千切れて8着に大敗。「永澤剛に『このままじゃA級に落ちますよ』って言われてまずいと思った」と目の色を変えた。2日目からの変わり身はまるで別人のようで、最終日には名古屋記念の最終日以来となる今期2勝目を挙げた。激変の裏には気持ちの面だけではない確かな裏付けもある。
「(菅田)壱道にサドルが高くないですかって言われて。最近はスピードレースになっているからサドルが高い方が楽について行けるかなって思って上げていたんですけど…。壱道と永澤のアドバイスでサドルのハナを下げたら道中から全然違った。初日はパンクした自転車に乗っているみたいに重たかったのに、セッティングを変えたら楽に回せるようになりました。自分でもビックリ。でもこれで安心しないように。もっと点数を上げていけるように」
レースを見ていた菅田が「2日目からペダリングが全然違う」と太鼓判。心と体が噛み合って覚醒した小野を追い掛けたい。
16年に起きた熊本地震の影響で、初めて久留米で行われた66周年大会を制している中川誠一郎は強い気持ちで今シリーズに臨んだが残念ながら二次予選で敗退。それでもファンの声援を力に変えて3日目、4日目と勝利で締め括った。
「あれだけ(応援を)してもらったら頑張らないとなってなりますよね。(久留米での代替開催の)最初と最後で(優勝を)決められればって思っていたんで、頑張りたかったんですけど…。昨日(3日目)は本当にきつかったですね。今日(最終日)の新聞に載っている4人を見たら、加われないんじゃないかって。時代は流れているんだなって。そうやっていかないといけないとは思うんですけど…。でも悔しさはあるので、悔しさがなくなったら終わりですし。自分にもまだ期待している部分もあるので。(熊本競輪が再開するまで)つなげて行きたいですね。気持ちも体も両方ですね」
最終日の6レースに『ルーキーシリーズ2023プラス』が行われた。九州勢は4名が参加したが、同門の熊本両者は、久留米ホームの梶原海斗-長松空吾とは別線を選択。半田誠の仕掛けに乗って番手まくりを放ち、佐藤壮志が後続を4車身引き離してゴール線を駆け抜けた。
「誠がうまく行ってくれて。ホームで後ろを見たんですけど、誰も来ていなくて。結果的にはバックまで待っても良かったかもしれないですけど、誠が頑張ってくれたんで。待って無駄にするより、自分の行ける距離になったら行こうと思っていきました。いまできる最大限は出せたかなって思います。誠が行ってくれなかったら、このメンバーで自分で勝てる自信はなかったので。誠のおかげですね。(ファンの声援が大きかったが)めちゃくちゃ応援してもらって嬉しかった。決勝の先輩方にいい流れを作れればと思って走りました。デビューする前から1年以内にS級にって思っていましたけど、デビューした今もそこはブレていないですね。熊本記念に出られるように先輩たちに少しでも追いつけるように頑張っていきたいです」