4車結束の地元作戦がズバリ
「(前の二人が)気合の入った走りで、もう無我夢中でした。泰斗とは練習仲間ですし、熊本記念で熊本4車で連係できたことが本当に最高でした」
来年6月を目途に熊本競輪の再開が発表され久留米で行われる最後の『火の国杯争奪戦』。熊本のエース嘉永泰斗の真後ろからピンクの勝負服をまとった中本匠栄が直線で鋭く伸びて記念初制覇を達成した。
4車で結束した熊本ラインの先頭を志願した松岡辰泰は正攻法の構えから誰ひとりたりとも出させぬ構えで残り2周過ぎから誘導員を降ろして全開スパート。最終ホーム手前から車間を空けた始めた番手の嘉永泰斗にも隙はなく、最終2コーナー手前から番手発進。準決で隙郡司浩平に隙を突かれてしまった中本は最大限の注意を払って最後の直線に賭けた。
「準決もそうでしたけど、SSが相手でいつくるかわからない。付いていかないといけないし状況も確認しないといけない。ビリビリしていました。ゴール前勝負というよりも3番手を回っている以上、嘉永君が番手まくりしたからには来たのを止めようと、仕事しようと思っていた。ギリギリまでまって抜けるか抜けないかの勝負でした。(優勝は)Vを観るまでわからなかったですね」
今年1月の落車からリズムが狂い始め、一時期は111点を超えていた競走得点も大幅に落としてしまっていたが、苦しい時期を乗り越えてようやく努力が実を結んだ。
「(今年は)苦しかったですね。色々と試したことがあっていい結果に繋がらない中、そこで得たこと、今までやってきたことを今回は出せました。状態としてはやれることをやってきたけど、ベスト、絶好調ではなかったですね。連日、前と後ろのおかげでここまでこれた。追い込みに変わって、追い込みとしてステップアップしてきたわけじゃなく、点数とかで良い位置を回らせてもらっていたので。昨日、塚本(大樹)君と話したことが今後のプラスになると思う」
最終日はオープニングレースに登場した東矢昇太の勝利から始まり、11レースで勝った中川誠一郎までで地元勢はすでに5勝の活躍ぶり。決勝を前にバンクのムードは最高潮。ファンの声援を力に変えて強敵を退けた。
「連日、すごい声援がありがたくて、後押ししてくれました。久留米開催だけど、熊本からも応援してくれる人がいてありがたかったですね。今の状態で確実に決勝に乗れるかは不安でしたけど、最高の形で終われました。(20年9月にG2を獲っているが)順番が逆になったけど、良かったです。熊本バンクの復活が決まって嬉しい。課題だらけなことに今回は気が付けたので。ひとつひとつレベルアップしてラインで決められるようにまた頑張りたい」
地元のエースとして大事な番手を任されていた嘉永泰斗は他地区に優勝を譲るわけにはいかなかった。初日特選で落車のアクシデントに見舞われてしまったが、残り3日間を気力で戦い抜いた。
「とりあえず良かったです。準決で郡司さんがあそこ(ホームで)できていたので。余裕がなかったですね。ヤバかった。(松岡が失速してきて)いったけど、ワンツーだったので。なんとか良かったです。何とか良い形で終われたので。匠栄さんが獲ってくれて良かった。自分はもう脚がいっぱいでした。最終日が一番の声援で後押しされましたね。来年の(熊本記念)一発目は獲りにいきます」
初手から九州勢を追走していた郡司浩平は反撃のチャンスを窺っていたが、仕掛けるタイミングをなかなか見つけられない。最終2センターから車を外に持ち出して強襲を狙ったがわずかに届かず3着まで。
「スタートはとりあえず出ないと立ち遅れるんで。どっちが前でもあの位置からかなって。新山君は絶対にくると思っていた。1センターで(嘉永が)行って、もう一回立て直した新山君がどこからくるのかで、あとは自分はどこでいけるかでした。ホームで詰まったときに内に行けばよかったですね。あの1車分、届かなかったですね。動けなかったけど、余裕は終始あったので。そこは収穫ですね」