近畿、関東でのV争い
稲毛健太、地元の藤木裕に2班ながらも山本伸一、岡崎智哉と、機動力を備えたメンバーが集まった近畿勢。層の厚さと結束力の固さでシリーズの主導権を握り、V戦線を有利に運ぶ。地元の和歌山記念から16年の始動となった稲毛は、1着で昨年の同記念以来1年ぶりに記念決勝進出を果たした。二次予選では新井秀の強襲にあったものの、村上義を連れてケレン味ない仕掛けからともに勝ち上がりを決めた。続く準決では車間を大きく空けた村上のアシストにも助けられながら、井上昌らを不発にして鮮やかに逃走劇を完結させた。8着に沈んだファイナルでも、別線となった稲垣裕を苦しめる先行策で存在感をアピールと、シリーズを通して動きの良さが光っていた。当所は一昨年に一発勝負で行われたワールドステージで打鐘先行から、ボティシャー、パーキンスの世界の強豪を退けて逃げ切った相性いい舞台。持ち前のスピードを存分に生かして、念願のG3制覇へまい進しよう。まだ完全復活とはいかない藤木だが、村上兄弟、稲垣らが不在の地元シリーズで弱音は吐けない。今年は正月シリーズの玉野で、山本の男気溢れる積極策から番手回りを生かし吉田敏らを倒してV奪取と幸先のいいスタートを切った。元来、ヨコの動きを備えた競走センスも持ち合わせていて、近況は番手での立ち回りも増えてきた。それだけにお膳立てが整えば、藤木が願ってもない展開を生かしてあっさり地元Vのシーンまでありそうだ。
いまをときめく茨城107期のひとり鈴木竜士が、向日町バンクに初登場。3場所連続での完全Vで特進を遂げてから、S級で5場所を消化した。まだ優勝こそ果たせてはいないが、随所でそのポテンシャルの高さを披露している。昨年の伊東では深谷知、そして直近の大宮では浅井康。2度の記念準決では前記した2人のまくりに屈したが、大宮記念の二次予選では付けた神山雄を振り切っての逃げ切り。G戦線でV争いを演じられるだけの機動力を備えていることは周知の事実だ。山下渡、神山拓弥の茨栃勢に加えて鈴木庸之と、関東勢もつぶぞろいで魅力たっぷり。地元の近畿勢にとっては、脅威の勢力だろう。
今シリーズは近畿、関東の2つの勢力が大きな潮流を作りそうだが、他地区も展開ひとつで浮上の余地は考えられる。北日本勢は直近の大宮で2度目の記念優出の安部貴之、ソツのない山田敦也に箱田優樹らの機動型がうまくマッチングすれば、V戦線に食い込むことも難しくはない。
また、山口富生、西川親幸、星島太と各地区の屋台骨を支えてきた名うてのマーカー陣も顔をそろえて、虎視眈々と上位進出への機会をうかがっている。それぞれの地区の機動型が奮起して好展開をメイクすることができれば、チャンスをモノにできるだけの冷静なコース取りと差し脚を有していて軽視は禁物だろう。