¥JOY×プロスポーツ記者が選ぶ極上バトル⑤ ~4回転モンスター・山崎芳仁(福島・88期)~

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山崎芳仁
グランドスラムへ残すタイトルはダービーのみ

 昭和から平成にかけての競輪界は、長年に渡って3.54~3.64が主流であったが、山崎芳仁(福島・88期)が4.00を使いだした時には驚きを隠せなかった。ベテラン選手が脚力不足を補うために大ギアを踏んでいたが、正直使いこなせるのか? と思っていた。しかし、記者の心配は全く無用で白星の山を築いていった。その後もギア倍数はさらに上がり、2012年に前橋グリーンドームで開催されたオールスター競輪では4.33のギアで8度目のVを掴む。ダッシュと引き換えにトップスピードを重視したセッティングは同県同期・渡邉一成のカマシに口が空いてしまう。岩津裕介(岡山・87期)が分断する形で一旦は離れたが、打鐘でドッキング。3番手を固めていた成田和也(福島・88期)も続いて福島3車で主導権を奪い、結果的には絶好の番手回りから4コーナーで車を外に持ち出してタイトルを手にしたのである。

 その後も競輪界の大ギアブームは続いて最大値の4.58までエスカレートしていったが、2015年の開催より4.00以上の大ギアの使用が規制された。これによって山崎には不利になってしまうと思われたが、大ギア時代を牽引しただけあって対応は他の選手より早かった。規制後初のG1・全日本選抜競輪の決勝は、バック8番手に置かれたが、3.92のギアで痛烈なまくりを放ち、番手を回っていた菊地圭尚(北海道・89期)にゴール前で迫られながらも見事に優勝したのである。

 2011年3月11日に東日本大震災が起こり、山崎は沖縄に拠点を移した。全日本選抜競輪が行われた静岡競輪場で取材した時に「練習方法をガラリと変えて、フレームも換えました」とギア対策は万全で、競輪に対する姿勢は誰よりも情熱的だった。それは今でも変わっていない。

 兄弟子の佐藤慎太郎(78期)が2019年競輪GP(立川)を優勝した。「慎太郎さんが43歳でチャンピオンになるのは凄いし、自分にもまだ可能性はありますね」と話していた。今年はコロナウイルスの影響で日本選手権競輪(ダービー)が中止となってグランドスラムは来年に持ち越しとなってしまったが、G1を9度制した実力者はさらなる高みを目指して奮闘を続けるに違いない。

山崎芳仁プロフィール⇒https://www.yen-joy.net/racer/data/013920

永岡孝史記者

2020年5月13日 10時51分

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