¥JOY×プロスポーツ記者が選ぶ極上バトル⑪ ~2019.熊本開設69周年記念in久留米~

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中川誠一郎
熊本希望の星
後輩と掴んだ初の記念完全V

 2016年4月に熊本地震が発生し、翌月に開催された日本最高峰のG1・ダービーで単騎ながら最終ホームで仕掛けて悲願のG1初優勝を成し遂げ、復興への想いを口にした中川誠一郎(熊本・85期)。熊本競輪場が被災して使用できなくなった影響で、同年10月の熊本記念は久留米競輪場で開催され、そこから現在に至るまで、熊本記念は4年連続でin久留米と言う形で久留米競輪場に場所を移して行われている。その中でも、特に印象深く残っているのは昨年10月に行われた開催だ。
 
 その年の中川誠一郎は2月の全日本選抜競輪を単騎戦ながら逃げ切りで制すと6月の高松宮記念杯は脇本雄太(福井・94期)の番手から直線で鋭く抜け出して優勝とノリに乗る中での10月の地元記念を迎えた。
 
 前検日に「G1よりもしっかりと調整してきた」と万全の状態で乗り込んできたとコメントした通り、初日特選は単騎で最後方から怒涛のまくりで前団を捕えて1勝を挙げると、二次予選Aでは目標にした中本匠栄(熊本・97期)と連結こそ外したが、中団で態勢を立て直すと、最終3コーナーから鋭いまくりを決めて2勝目。準決勝は同県の後輩でもある113期の上田尭弥に任せて、最終ホームでは桐山敬太郎(神奈川・88期)に叩かれてしまうが、松谷秀幸の後位にスイッチすると最終2センターから外を踏み込み直線で突き抜けた。前検日に「優勝含めて3勝できれば」と話していたがこれで無傷の優出を決めた。
 
 そして、迎えた決勝戦。後ろ攻めの松浦悠士(広島・98期)が赤板過ぎにインを切ると、すかさず柴崎淳もその上を切る。そこを二次予選Aに続いて前を任せた中本匠栄が、打鐘を目がけて一気に叩いて主導権を奪取。番手の中川誠一郎は最終ホーム手前から巻き返してきた門田凌(愛媛・111期)を1コーナーで外に振って勢いを殺すと、2コーナーから反撃に出た松浦に合わせる形で最終バック手前から番手まくり。後続の追撃を寄せ付けずに振り切ってVゴールを駆け抜けた。昨年に続く熊本記念連覇のみならず、自身初の記念完全制覇を成し遂げた。
 
 「他地区の選手の後ろからじゃなくて、後輩(中本)の後ろから優勝できたのは選手冥利に尽きるし感動ですね。地元記念で初めて記念を完全優勝できたし、40歳にして自分も成長している」と後輩との連係で掴んだ優勝に心を高ぶらせ、そして不惑の歳を迎えてもなお、進歩を続けている男の背中には、競輪の全てが詰っているような気がした。

レース結果の詳細とダイジェスト映像はこちら→https://www.yen-joy.net/kaisai/race/result/detail?b=83&s=20191024&ym=201910&d=20191027&r=12

池端航一記者

2020年5月28日 00時43分

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