諸橋愛華麗な逆転V
高松宮記念杯、寬仁親王牌と立て続きに落車に見舞われた諸橋は、シリーズ2日目にも落車の憂き目。3場所連続の落車がフィジカルに影響を及ぼさないはずもないが、それ以上に精神的な加重がのしかかった。
「すべてを地元の寬仁親王牌に合わせてきていたし、寬仁親王牌は決勝に乗って初めてスタートだと思っていた。だから、終わったあとは不甲斐なさというか、人生はうまくいかないなって。苦しいことばかりだったんで勝ててよかったです」
驚異の加速力で深谷が、別線を置き去りにして主導権を奪取。これで番手絶好の金子の優勝かに思われたが、不発の城から切り替えた諸橋が目の覚めるような伸びを披露。鮮やかな逆転劇で優勝をもぎ取った。
「展開的には厳しかったけど、意外と冷静でした。俺が行こうかなってコースを岩津が入っていったんで自分は外を思い切り踏めた。金子さんは内の岩津を意識するし、それで僕は伸びました。ビクトリーロードが開いた。この優勝をまたひとつ上のステージ(G1、2)でできるようにしたい」
リスキーながらも狙った獲物に向かって突っ込むスタイルこそが、諸橋の真骨頂。落車禍を抱えながらも、その身上に迷いはない。
深谷の番手であくまで冷静に立ち回った金子だったが、誤算は諸橋の切れ味。上がり10秒9にはさすがの金子も脱帽するしかない。
「佐川、吉本も見えていた。これなら(深谷とワンツーが)決まるなって思っていたし、最後に岩津が入ってきたのもわかった。そしたら、あっ誰だって…、諸橋でしたね。でも、あれはスピード違反でしょ(笑)」
諸橋を追走した牛山が、外を踏んで3着に流れ込み。
「城君も浮くのを覚悟で仕掛けてくれた。自分は諸橋さんの後輪だけ見ていた」
「出させるつもりはなかったんですけど、気づいたらもうヨコにいました…」と、佐川は深谷との力差を痛感して振り返る。
8番手で大きく車間を切った深谷が、次元の違うスピードで大ガマシ。最後は失速も復調への光が見えた。
「結構(佐川が)流してたんで、チャンスだと思った。ただ、2歩目がスリップした。あれがなければもっとスッと出られましたね。練習みたいな感じで、掛かりは良かった」