好位奪い豪快まくり
勝負は赤板ホームで決まったと言っていいだろう。逃げる竹内の3番手は桐山のものかと思われたが、「すごい自分の中では悩んだ部分があったんですが。結果として『ダメでもいってしまえ』という気持ちが、運よくあの位置を取れた」。攻めに徹した新田が思い切って仕掛けると、口の空いた桐山に代わって3番手にスッポリ。2コーナーまくりで3月ダービーに次ぐ今年2度目、通算3度目のG1制覇を飾った。
「準決勝の稲垣さんの先行、村上(義弘)さんの車間切りとブロックっていうのが絶妙なタイミングで、してやられたりって感じだったので、今日も同じような展開になるかもしれないと思っていました。そうなっても内が空くので、そしたら神山さんのチャンスだと思ってました。何としても僕がそこを潜り抜けられるように踏み込むしかないって気持ちで頑張りました」
4コーナーを立ち直ってからも「また昨日みたいに神山さんに抜かれるんじゃないかと思っていたので、ガムシャラで。まっすぐ走れなかった」。何度も不安が新田を襲ったが、全てを振り切るだけの力が今の新田にはあった。「すごい大きな存在」と話す来年のリオデジャネイロ五輪に向けた取り組みが競輪にも大きく反映されている。
「(オリンピック出場そしてメダル獲得のために)コンディショニング、モチベーションというものを思ったところに合わせるということができるようになってきたのが昨年ぐらいから。そこからやっと勝ちにこだわりながら、勝負どころでの勝負というのをできるようになったのがオールスターで優勝できた(要因の)ひとつだと思います」
僅差のダービー優勝から一転、3車身差で決めたタイトルは成長の証。来年のオリンピックまで新田の進化はまだまだ続きそうだ。
大会6度目の制覇を狙った神山は離れながらも新田とワンツー。これで賞金ランクを3位とし、グランプリ出場をほぼ確定させた。
「新田が強かったですね。(3番手に)追い上げたときも相当なスピードで離れそうになったし、それから間髪入れずにまくって行ったんでちょっと離れてしまった。一番人気になってたんで、何とか2着までには入ろうと。新田の得意パターンになりましたね」稲垣裕は載冠ならず
後ろ攻めからレースを動かした稲垣だったが、最終的に置かれた位置は8番手。1センターから巻き返すも3着までが精一杯だった。
「最悪の展開になってしまった。入られたのも想定外だったし、一番強い新田に3番手を取られてはダメ。すごいかかりだったし、あそこしか行くところがなくて後ろには勝負権がなかった。反省するとこは反省して。最後のG1(競輪祭)を頑張って戦っていきたい」
最終ホーム9番手の稲川にとって前団はあまりにも遠かった。
「しょうがないけど、しょうがないで終わらせないように。強い選手はどこからでも1着を取りますし、僕もそれでも1着を狙えるように頑張ります」
逃げ切り3連勝で初のG1決勝の舞台に立った竹内。決勝でも主導権を握ったが、新田の威圧感に飲み込まれてしまった。
「ただ先行しただけですね。もうちょっと落ち着いて走れればよかったけど難しかった。(赤板)バックでビジョンを見たら新田さんが3番手にいたのが分かって焦ってしまった。いい勉強になりました」
大塚はまさかのツキバテ。「ニュートラルに入らないまんま。それで(新田を)振ったけどダメでした。実力ですね。竹内はよく頑張ってくれたし、気持ちが嬉しかった」。ハイペースで駆ける竹内の後ろで、もはや余力は残っていなかった。
竹内を受けて3番手確保するかに見えた桐山だったが、口が空いたところを新田に入られ万事休す。
「あそこで来た新田もすごいけど、僕がピッタリ付いてれば新田もそのまま行っただろうし自分の展開になったと思うと悔しいです。そこが敗因ですね。新田のとこまでは踏まなきゃと思って行ったけど、行けなかったのも力不足です」
「一杯だった。ものすごくいい経験をさせてもらった」と話すのは渡邉。地元唯一のファイナリストだった武井も「ここに来て完全に脚負け。また課題が見つかった」。桐山に任せた2人は久々のG1決勝を淡々と振り返っていた。