• 平競輪場第60回オールスター競輪8/11〜8/15

後記 GⅠ 平 08/11

地元に捧げるワンツー

渡邉一成

渡邉一成

3深谷に接触した4竹内の落車で中部は3車に 4番手を確保した1新田が2角でまくりを打つ 1新田をゴール寸前でとらえた7渡邉が地元V

 何度も重ねてきたシミュレーション。だからこそ、格別のはずの地元G1制覇にも、渡邉は素直には喜べない。
 「ブサイクなレース。スッキリしない勝ち方だし、手放しでは喜べない。新田に申し訳ない…」
 竹内が落車のアクシデントで新田は、4番手を手に入れた。その新田がまくりで浅井を乗り越え、渡邉も続く。あとは地元S級S班のマッチレース。新田が最終4角手前で外に振ると、渡邉は内から新田に体を併せた。
 「地元で勝ったっていうだけで、内容が良くない」
 “まくりの新田を外から交わす”。同県の後輩であるだけでなく、競技では海外遠征で苦楽をともにしてきた。そして今年は同じS級S班。誰よりも近くで新田の強さを知る渡邉だからこそ、新田を外から抜く意味を、その本当の価値をわかっている。
 「去年から比べると新田の成長のスピードは本当にすごいものがあって、もう僕はただ付いているだけで抜ける気はしなかった。今回もたまたま内に入ってしまったから勝てただけで、実力ではないかなと。あとは執念だけでした」
 1月の地元記念を制覇し今年2度目の優勝がオールスター。地元の大舞台のプレッシャーに押しつぶされることなく、シリーズ2日目の12日に34歳になったばかりの渡邉は地元ファンの期待に応えた。
 「東京オリンピックが控えているのに、ここで緊張して体が動かない状況では、オリンピックでは勝負できないと。決勝は余裕を持って走れた。(東京五輪へ)僕の中ではなくて、監督の中に秘めたものがあると思うので、僕はそれにしっかりと、故障で練習できないとか、疲れて練習できないという状況にならないよう、万全の状態でトレーニングに励むだけです」
 4大会連続の五輪出場。3年後の東京五輪に迷いはない渡邉が、まずはグランプリを見据える。
 「グランプリの舞台でやり残したことがたくさんあった。それは新田も同じだと思う。今年はもっといいレースを2人でしたい。グランプリまでしっかりとトレーニングに励んで、最高の舞台で最高の成績を残したい」
 新田とのグランプリ。すでにイメージはできている。新田の次元の違うまくりを外から交わしてV。その時まで、カズナリの最高の笑顔はとっておこう。力魅せた新田祐が準V
 高松宮記念杯、サマーナイトフェスティバルに次いで3連続でのビッグ制覇がかかっていた新田は、4分の1輪差で2着。それでも深谷の逃げをあっさりねじ伏せたスピードでスタンドを沸かせ、多くの地元ファンを魅了した。
 「目標としていた(ラインの)3人で独占ができなかったのは悔しい。まさかあんな風に落車になるとは誰も思っていなかった。波乱のレースになったなかで、地元ワンツーはよかったです。深谷君も強いし、浅井さんはタテにも踏めるしヨコもできる。坂口君もいてしっかりしたライン。だから、4番手を取ったからといって確信はできなかった。しっかりしたところでしっかり仕掛けようと。そういう仕掛けはできました」
 竹内の落車で深谷の番手になった浅井は、スピードの違う新田を止め切れず3着がいっぱい。
 「(竹内)雄作の落車を避けてだいぶ脚にきていた。そのあとはしっかりとレースができたけど、新田君が強かった。あれは止められない…」
 新田が4番手に構えて、単騎の脇本、原田は7、8番手。最終1角で脇本がまくりを打ったが、時すでに遅く新田に合わされ不発。
 「新田さんが引いてきた時点でチャンスがなかった。落車を避けて、(体が)固まってしまった。もうちょっともつれると…」
 「競られるのも覚悟していたけど、気持ちだけが先走ってしまった。経験不足です。ラインにもお客さんにも迷惑を掛けてしまった…」と、言葉を振り絞るのは、青板のバック過ぎに落車した竹内。

Race Playback

レース経過

誘導員 : 佐々木雄一

 新田がスタートを取り、以下は渡邉-山崎、脇本、原田、深谷-竹内-浅井-坂口の順で並んだ。
 周回が進み、青板周回の2角から深谷が勢いよく上昇していき、バック過ぎに先頭に立った。このとき、竹内が深谷の後輪に接触し、バランスを崩して落車。すると、浅井が追い上げて替わって番手回りになる。下げた新田はすんなり中団4番手に入り、落車のあおりを受けた脇本、原田は切り替えられず、それぞれ7番手と最後尾に置かれた。赤板を通過してさらに打鐘を迎えたが後ろからの反撃はなく、深谷は3角からペースを上げていき、最終ホームでトップギアに入れた。深谷が懸命に逃げる一方で、脇本が最初に反撃するが、車は1車進んだだけ。今度は2角から新田がスパートすると、こちらはスピードが違った。新田は一瞬にして中部勢を飲み込むと、渡邉と2人でセーフティーリード。大勢は決した。地元両者のマッチレースは、新田が4角で車を外に振ると渡邉は内のコースを踏み、ゴール寸前で交わして2度目のG1優勝を手にした。山崎は踏み出しで離れ、深谷の番手から浅井が追い込んで3着に入る。

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