吉田敏が2度目の美酒
2月の全日本選抜で落車し、続く静岡記念を欠場。前検日の「もう少し時間が欲しかった」という言葉が吉田の本音だった。不安な体調面をカバーしたのは仲間の力であり、地元記念にかける吉田の精神力。「嬉しいっすね。前回よりも嬉しい」と話す目は少しうるんでいた。
「今回は(地元記念を)獲るためにこうしなきゃ。4日間、それを貫けた。和也が決勝に上がってきて、決勝の並びも正直迷ったけど、獲るためにどうするかを考えて。浅井が頼もしかったね。あのユニフォームに相応しい男でした」
打鐘で高橋が叩かれると、浅井がホームから巻き返す。しかし、そこには当然のように村上の抵抗が待っていた。
「1コーナー、2コーナーは絶対に村上さんが来るところ。浅井が無理やり行くのは分かってたし、そこが勝負だと思ってた。あおりで共倒れではね。一番キツいところを冷静に回れたのがよかった」
2度目の地元記念を制した達成感はある。しかし、「今まではここでホッとしてたけど、今は最終目標じゃない。次の目標に向けて」と勝利の余韻にひたるつもりはない。次のウィナーズカップから再び中部一丸となった頂点を目指す戦いがはじまる。
単騎の松浦は吉田に続く絶好の流れになったが逆転はならず。
「最後はトシ(吉田)さんのペースにはまった。地元のパワーですね。吉田さんが踏んだ瞬間は抜けると思ったけど…。あそこまでいくと悔しいですね」
3着の菊地だが口を突くのは自分自身へのいらだちばかり。
「言うことはないですね。(松浦は)ずっと勝負どころでフワフワしてたから、しゃくっとけばよかった。連日の村上さんを見てると合わせるのかなと思ったし、2コーナーで前が浮いてるときも内、外どっちに行くか迷ってしまった。全部、人任せ。いい着を取ってもモヤモヤ感が残る。ダメっすね」
吉田を勝利に導いたのは最終ホームから仕掛けた浅井の気迫だ。
「無理やりだったけど、あれしかないでしょう。村上さんはサラ脚で(番手から)出てくるのは分かってました。村上さんじゃなければワンツーだったかも。いいもがき合いができて楽しかった」