中川誠一郎が今年2度目のG1制覇
「現役のナショナルチームの2人はすごいですね(笑)」
ロンドン、リオデジャネイロでの五輪出場経験がある、元日本代表の中川誠一郎は、優勝会見でこう言って笑みを浮かべる。来年の東京五輪を見据える日本の両エース、脇本雄太、新田祐大に敬意を表した。近畿でただひとり決勝にコマを進めた脇本とは、リオデジャネイロ五輪をともにした元チームメイト。中川は、その脇本マークを選択した。
「脇本君のおかげですね。脇本君の掛かりが良かったんで、僕も出られるかどうか半々だった。小原(太樹)君も内にいるのがわかったけど、新田君のスピード的に出るしかないと」
周回中、7番手にポジションを取った脇本が、赤板2角からスピードに乗せて主導権を握る。単騎の小原まで3車で出切って、逃げる脇本が抜群のダッシュで4番手以下をちぎったが、また新田のまくりも驚異のスピード。最終3角で前団を射程圏に入れて迫りくる。現日本代表の2人を前後に見ながら、中川が直線で目いっぱい踏み込む。
「(優勝を確信したのは)直線に入ってからですね。今回は体力的にも、技術的にも、心の精神的にもしっかりかみ合ったなって感じがします。(調子が)上がっていくような4日間だった。決勝に向かって、ピークが3日目、最終日にくるような形だったので成功しました」
2月の全日本選抜で16年のダービーの初タイトル以来となるG1を奪取。年末の「KEIRINグランプリ2019(GP)」の出場権を真っ先に獲得したが、その後は精彩を欠くことも多かった。
「5月に走りすぎた。3場所も走って、そんなに走れる体力はないんだなという風に気付いた。それでしっかり体力を回復させてきたんで、なんとかもちました。ちょっと立て直すのに時間が掛かりましたね。ダービーも無理やり入れたんですけど、空回りした」
4度のG1ファイナルで3度の優勝。G1の舞台で無類の勝負強さを見せた中川だが、これまでの2回は単騎でのもの。脇本の先行に乗った“おいしい”展開にはジョーク交じりにこう言う。
「正直、(今年)2個目を獲れるとは思わなかった。初めて他力というか、先行の番手で(最終)4コーナー回ってきた。なんというか恵まれたというか、そういう状態で獲ったんですけど。(デビューから)20年近く自力で頑張ってきたので、たまには、こういう勝ち方もバチは当たらないかなと思います(笑)。20年近く自力で頑張って来たので、あと5年くらいは恵まれたい(笑)」
脇本のダッシュに付け切り、新田の追撃を退けた中川の脚力も現日本代表に引けを取ることはない。不惑を迎えたものの、この先の5年、自力でのGI制覇も可能だろう。
8番手に立ち遅れた新田祐大だったが、最終ホーム過ぎから踏み込んで準V。3度目の高松宮記念杯制覇はならずも、力のあるところを見せた。
「結果的にジャンからホームのところで仕掛ければ良かった。タラレバですけど…。最後は(中川)誠一郎さんとスピードが合ってしまった」
周回中から脇本ラインを追った単騎の小原太樹は、初のG1ファイナルにも舞い上がることなく冷静なコース取りで追い込んだ。
「僕も4番車だし、(位置を)選べる立場じゃない。それに初手がどうなるかもわからなかった。ただ、付いていくのも問題なかったんで、調子は良かった。本当にリラックスして走れた。自分みたいな選手がここ(G1決勝)に乗れるっていうのは夢がありますね」
脇本雄太は新田を後方に置く理想の展開で逃げる。しかしながら、直線の入り口ではいっぱいで5着に沈んだ。
「(周回中は)先行しやすい並びになった。中団にこだわるのは誰かって考えた時に、清水君が4番手に入るのが良かった。そうすれば新田さんを8番手に置けるかと。ここまで3日間が悪くて、自分でなにかを変えようって。先行する意欲は、今日(最終日)が一番強かった」