新田祐大がラインの力で2度目のオールスター制覇
地元の深谷知広、完全Vでダービーを獲った脇本雄太。ナショナルチームで互いを高め合い、初日のドリームにも同じく選出された2人が、準決で敗退した。日本代表としての誇りと4車で結束した北日本ラインの要の番手。2つの重責を担った新田祐大が、平原康多との壮絶な踏み合いを制した。
「すごくドキドキしましたし、いまでもまだドキドキしています。(菅田)壱道は男らしかった。自分はいままでG1の決勝をグランプリを含めて何回と走っているけど、いままでにはない緊張感でした」
早めに動き出した南関勢を阻んだ菅田が、気迫の突っ張りで主導権を守り切る。結束した4車でのアドバンテージはあったものの、5番手には脚力をロスすることなく平原康多が虎視眈々とタイミングを計っていた。
「壱道の先行力がすごくて、強い走り方をしていた。僕自身もかなり苦しくて、あれ(平原を合わせたところ)が限界の位置だった。もっと早く出られれば良かったけど」
車間を詰めた勢いで最終2角からまくった平原は、抜群のスピードで新田に襲い掛かる。バックでは平原が前に出たが、ナショナルチームで磨かれた瞬発力で新田が懸命に合わせる。締め込む平原を合わせ切って、新田が直線を迎えた。
「壱道にとっては、これが今年最後(のG1出場)ですし、そういうのもありながら(前で頑張ってくれる気持ちが)素直にうれしかった。オールスターっていう大舞台の決勝っていうことで、競輪選手を含め、ファンの人も、みんなレースを見てくれている。そのなかで北日本っていう地区が、若い強い選手が出てきていますけど、そういう選手たちが、自分たちの求めるべき場所、自分たちのするべきレースっていうのが、今回の(菅田の)レースでいろいろ感じ取ってくれたんじゃないかなと」
平原は力尽きるも、外から諸橋愛、渡邉一成、中のコースを佐藤慎太郎が迫り来るが、新田を脅かすまでには至らなかった。単騎で勝ち取った昨年2月の全日本選抜以来のG1制覇は、ラインの力で勝ち取ったものだった。
「(G1優勝の)回数がどうのこうのよりも、その結果みんなが喜んでくれれば。今後は(来年の東京)オリンピックに行く予定になっているので、(優勝で)力がみなぎっている」
来年に東京五輪を控えて、まずは出場権獲得に向けて競技に専念。23日から静岡県伊豆市で行われるジャパントラックカップに集中する。今年の競輪での出場機会は今シリーズが最後だったが、この優勝で年末の大一番「KEIRINグランプリ2019(GP)」の出場が決まった。
「今回の優勝でグランプリの出場権利が得られたと思うんですけど、そのグランプリに向けていま以上に強くなれるように、日々の練習を頑張りたい」
ファン、そして仲間の思いを優勝という最高の形で結実させた新田が、世界に羽ばたき、年末の立川グランプリに帰ってくる。
北日本ライン4番手の佐藤慎太郎は、3番手の渡邉が外を踏むと中を突いて2着に伸びた。今年2度目のG1準Vで賞金ランクを4位に押し上げた。
「(渡邉)一成は新田がバランスを崩したと思って、外に持ち出したんでしょうね。俺はその動きを見て一瞬、外か内を見てから(内に)どこまでって感じでした。今回から新車にしてスピード競輪に対応できた。踏み出しは重いけど後半の伸びがいい。これでグランプリが近づいたっていうか、ほぼ決まりでしょ。でも、守りには入りませんよ。一戦、一戦しっかりと」
平原マークの諸橋愛は、直線で差し脚を伸ばす。外から新田をとらえ切れずも納得の顔。
「俺も(平原)康多が行き切ってくれればチャンスだと思った。でも、新田が強かった。康多、頑張れって思ってた。残念だけど楽しかった」
最終バックでは新田をとらえていた平原康多だったが、コーナーで盛り返され直線ではいっぱい。
「乗り越えたかと思ったけど、新田もサラ脚で回ってるから。あそこからの加速がすごかった。最後は力負けです。仕掛けての負けなんで、力が足りない。あれを行ければいいだけですからね」