2度目の記念を地元で制覇
「今年は去年一緒に戦った郡司(浩平)さん、和田(真久留)さんがいなかった。その穴を埋めようと頑張ってたんで、少しでも(2人に)近づけたかな」
3度小田原記念を制したS級S班の郡司、昨年の当所記念を獲った和田がシリーズを前にともに欠場。同地区でナショナルチームの頼れる先輩でもある深谷知広は、準決で落車に見舞われて最終日を待たずに小田原を後にした。決勝は田中晴基と2人の南関タッグ。地元の主役として決勝進出の重責を果たした松井宏佑だったが、「勝負は明日(決勝)」と、あくまで優勝に目標を設定していた。それだけに「やったって感じですね、ホッとしました」は、松井の率直な気持ちだろう。
前受けを強いられた松井は、すんなり8番手に下げる。反撃の態勢を整える前から佐々木豪、清水裕友、守澤太志による動きが激しさを増し、結果的には松井にとっては仕掛けやすいながれが生まれた。
「(別線が)赤板で叩き合いとうか、モガき合ったんで、そこを行けば叩けるかなと思いました。自分の脚を信じていきました。いい感じで車間が詰まっていったし、出切ってからもいい感じで流れてくれました」
打鐘過ぎから踏み上げると、合わせる清水をスピードの違いでのみ込んで最終ホームで主導権を奪取。ナショナルチームで鍛え上げられた松井の脚が、抜群の加速力で後続を離し、清水、守澤も前が遠い。直線でもそのスピードが鈍ることはなく、ラインを組んだ田中とも1車身をたもったままゴールを先頭で駆け抜けた。
「今日(最終日)もまだ(ナショナルチームでの練習の)疲労があったけど、なんとか気持ちを入れて走ればと。ここはデビューしたバンクですし、地元で記念は絶対に獲りたかった。これからも神奈川を引っ張っていける選手になれるように」
18年7月にデビューした思い出の小田原で、初めての地元記念V。先輩たちに支えられてここまで来た松井が、神奈川、そして南関の思いを背負って逃げ切りで成し遂げた優勝は価値がある。
松井の強烈なダッシュに危なげなく付け切った田中晴基が、2着に流れ込んで南関ワンツー。
「付いていくのは楽だったんですけど、強かったですね。抜ける感じはまったくしなくて、直線があと5キロあっても抜けていないと思う(笑)。それくらい強かったです」
打鐘手前で3番手に追い上げた守澤太志は南関勢が出切ると、佐々木に踏み勝ち5番手からのまくりで3着。完全優勝はならなかったものの、目標不在のなかでS班の走りを魅せた。
「松井君の展開になっちゃいましたね。もうちょっと清水君が踏んでくれればおもしろかった。自分はもっとスパンってまくれたら良かった…。いつでも(自力を)出せる準備はしているけど、できれば自力はやりたくない。追い込みでやるって決めてるんで、目標がいれば」