清水裕友が地元記念を4連覇
「競輪界で誰もやったことがないことをやりたかった。競輪史に名を残すことができた」
同一記念4連覇は、現行制度の4日制記念になって以降、誰もなしえなかった大記録。地元のエースである清水裕友が、万雷の拍手の中で偉業を達成した。
昨年の当大会決勝でも前を任せた同級生の宮本隼輔を先頭に、後位を練習仲間の山下一輝と、柏野智典が固める盤石の布陣。だが、号砲が鳴った瞬間から、清水にとって一瞬たりとも気の抜けない戦いが始まった。
「まず前を取ることが一番の仕事でした。そこを取れないと全部が狂う。あんなに頑張ってスタートを取りに行ったのは初めて。(別線が)押さえに来ないパターンかと一瞬思ったけど、突っ張りを警戒して(阿部拓真が)カマシ気味に来ましたね。僕らラインとしては落ち着いて運べた。出させても5番手だったし、そこはラインの厚みですよね」
勢いよく押さえた北日本勢に、単騎の諸橋愛、小原太樹が続いて宮本は5番手の位置で態勢を整える。打鐘過ぎ4コーナーから一気に巻き返すと、阿部も全開で突っ張るが、今シリーズは超抜のデキを見せていた宮本のスピードが違った。
「前(阿部)が相当掛かっていたけど、(宮本)隼輔は連日調子が上がっていたし信頼していた。ビリビリしたし、正直、気を抜いていたら離れていました。隼輔を信頼して、必ず出切ってくれると信じていた」
宮本はバンクの外を踏んで、和田圭のけん制は届かない。和田が番手から出ても、お構いなしに宮本はその上をあっさりとまくり切る。最終3コーナーでは地元3人できれいに出切り、清水が宮本を差し切ってゴールした。昨年11月の当大会以来、7回目のG3制覇。地元3人で上位独占と、最高の形で3月ウィナーズカップ以来の優勝を手にした。
「山下さんまで出切ったのがわかって、ゴール前も外を踏んでるのが山下さんだとわかった。(山口ラインで)ワンツースリーなんて、最高ですね。決勝には安定して乗れていたから、いつかチャンスはあると思っていたけど、決勝になると力の差を見せつけられることが多かった。それがラインのおかげで、地元でチャンスをモノにできて、うれしいですね」
ゴール後はファンの前で、何度もガッツポーズを繰り返した。清水は最後に、連日大きな力を与えてくれたファンに感謝を口にした。
「連日すごい応援だった。地元じゃないと味わえないですよね。他の県の選手に、防府のお客さんはあたたかいねって言ってもらえたのがうれしかった。自分にプレッシャーをかけてやってきたし、ホッとした。今日は喜びに浸りたい。でも、このあとはすぐに競輪祭。タイトルを獲ることを目標にやっているし、気を引き締めて頑張りたい」
負けられない戦いを最高の形で締めくくった清水の勢いは、年末の大一番に向けてさらに加速していく。
圧巻のスピードで別線を瞬く間にのみ込んだ宮本隼輔が2着に粘った。清水の勝因は、この男のデキの良さと言っても過言ではないだろう。
「前受けから引いて、あとはタイミングだけでした。自分の感触は昨日(3日目)よりも良くなくて、気持ちだけでした。一番いい形で終われて良かった。やればできるなと感じました」
山下一輝が懸命に続いて3着。初の記念決勝で地元ワンツースリーを決め、晴れやかな表情で語った。
「最高ですね。諸橋さんがどこを狙ってくるかだけだったけど、すんなり回れたので。4日間全部前のおかげ。(清水)裕友の優勝に一緒に走れて、最高でした