今年のラストで初優勝
「今年はダメだなって、自分でもあきらめているところもあった。(優勝して)苦しいことだけじゃないんだって感じました」
通算7度のG1制覇(4日制以上)。すでにグランドスラムに王手をかけている新田祐大だが、今年の初優勝に喜びを隠さずにこう口を開いた。今年は12年のロンドンに次いで、2度目の五輪を地元で8月に終えた。ケイリン、スプリトの2種目ともに不本意な結果だった。中ゼロの強行スケジュールでオールスターから復帰した新田は、優出を果たすも決勝は5着。その後も優勝には、なかなか結びつかなかった。
「久々の優勝ってことで単純にうれしかった。本当だったら目指したところは、もっと上のところだった。もっと頑張らないとってあらためて感じました」
延期された東京五輪に専念。今年はわずか4カ月足らずでグランプリ出場権を争わなければならないハンディもあり、通算8度目のグランプリ出場を逃した。しかしながら、グランプリチケットの勝負づけが済んだあとも、新田は松山記念、伊東記念と師走の輪界を盛り上げた。
「今日(決勝は)そんなに上手なレースではなかった。ただ、この優勝っていうのは、来年以降プラスになる。自信をもって練習に取り組んで、レースでもガンガン攻めていけるようにしたい」
単騎の決勝は、ナショナルチームのチームメイト寺崎浩平が主導権。打鐘では深谷知広を後方に置いて7番手のポジションだった。
「深谷が(ラインが)2車だし、地元で勝ちたいっていう気持ちが誰よりもあったと思う。それで寺崎のレースになった。でも、そいういう風に考えていたんで対応もできた。(6番手で単騎の長島大介が)踏んでいって、深谷も同じタイミングで来るんじゃないかと。僕の動きで深谷が来づらくなるだろうし、自分にとっては有利な展開になった」
最終ホーム手前で北津留翼が仕掛けるが不発。今度は長島が仕掛けると、続いた新田がその上をまくって、直線半ばからは強襲する深谷と2人の勝負になった。
「ゴールした時はどっちが優勝したのか…、深谷かなって。一緒にオリンピックを目指してきたなかで、(深谷と)ゴール勝負ができたのはうれしい」
先頭でゴールを駆け抜けて、長く凝縮された21年をしめくくった。
「ナショナルチームと(S班の)赤パンツのプライドをここ何年かずっと背負ってきたけど、SSからは離れてしまう。(S班の)トップ9人から勝ち取るようなレースをしっかりと組み立てたい。明日、明後日からまたナショナルチームの練習が始まる。ヤンググランプリに出る寺崎、小原(佑太)、ガールズグランプリの小林優香がいるので、そのサポートをしながら、ナショナルチームから優勝が出てくれればいいと思います」
来年の1月に36歳を迎える“年男”。精神的な支柱となり、ナショナルチームの後輩に自身の経験を伝えながら、来年はS班に返り咲く。
8番手からのまくり追い込みだった深谷知広が2着。一撃にかけた地元記念準Vに肩を落とした。
「(新田と)2人でゴール勝負できたのは良かった。欲を言えば(ラインの)松坂(洋平)さんとワンツーでの(上位が)3人なら良かった。今回は動いて動いてギリギリの勝ち上がりだったんで、(決勝は)基本的に人の動きを見てからと。人任せと決めてたんで、結果2着だったんで失敗ですね」
松坂洋平は、深谷のスピードに対応して3着に流れ込んだ。
「もう(深谷に)お任せしていたし、ああいう形になってくれればと。(前が)どういう風になっているかわからなかった。深谷君の後輪だけを見ていた」