野原雅也が2年ぶりに掉尾を飾る
飛ぶ鳥を落とす勢いの中野慎詞や、山崎賢人が中核を担った九州4車との戦いを制して、野原雅也が今年最後の記念競輪を締めた。
自らスタートを飛び出した野原が前受けして周回が進む。中野をけん制しつつ、嘉永泰斗が青板バックで踏み込む。そのまま九州勢を出させても、野原に勝負権はない。合わせて踏んだ野原は、九州ライン3番手の中本匠栄に飛び付いた。
「車番が悪かったし、後ろよりも前からと思ってたけど、前が取れるとは思ってなかった。(嘉永と中野の)どっちが飛んできても遅れないようにとは思ってました。自分の現状の脚力じゃ、すんなり出させてもまくれる相手じゃない。いろんなことを考えてました。嘉永君が良いスピードで来て、(山崎)賢人さんの所は無理だった。あの並びなら中本さんか、田中誠さんの所。最悪でもその後ろは取りたかった」
初日特選で見せた単騎カマシのような、タテ脚の威力だけが野原の武器ではない。飛び付ける勝負度胸と、そこから位置を取り切るだけのヨコの技量が冴え渡った。最終ホームから番手まくりに出た山崎を、直線でとらえてVゴールを駆け抜けた。
「もちろん自分で仕掛けることも頭にあったけど、タイミングがなかった。優勝のことは考えず、無心でゴール線目掛けて踏みました。その結果が優勝だった」
「(野原)雅也は後方にはならない」と、同地区の追い込みからの信頼も厚い。さらなるレベルアップを果たして、今度はG1で。近畿地区をけん引する存在へと、駆け上がっていく。
「自分は不甲斐ないレースばかりだし、古性(優作)さんや、脇本(雄太)さんはすごいと思うことばかり。背中を追いかけるばかりじゃなくて、少しでも追いつきたい。今年は調子を崩してG1で活躍できなかった。来年は強い気持ちを持ってやっていきたい」
また、決勝戦には元ガールズ選手で伊東出身の妻、小川美咲さんら家族も応援に駆け付けていた。なかなか表情を崩さない野原も、その事に話題が及ぶと笑みがこぼれた。
「本当はあんまり来てほしくないんですけど(笑)。無事で走り切れたし、優勝賞金も出た。子供におもちゃでも買ってあげようかな」
クレバーな勝負師も、家に帰れば二児のパパ。最高のクリスマスプレゼントを届けるべく、早足で会見場を後にした。
2着入線の渡邉雄太は内抜き最終2コーナーからの内抜きで失格。3コーナーから内を踏んで突っ込んだ大川龍二が2着に繰り上がった。
「(中野との連係で)ずっとハンドルをしっかり握っていました。(中野が浮いてから)なんとか行けるところまでって。一戦、一戦無駄にできないし、こけてもいいくらいに行ってこけずにゴールできた。今年はS級の初優勝や、(共同通信社杯で)G2に初めて参加。記念で初の決勝確定板と初めてばかり。『俺はどこまでいくんだろう(笑)』って。仲間たちの助けや、助言もあってここまでこれたし、感謝の気持ちです。どでかいクリスマスになりました」
最終ホームで番手まくりの山崎賢人だが、直線で力尽きて3着。
「力不足でした。内も外も全部見えていた。からまれるのは、俺か、その後ろだろうっていうのも、わかっていたので。(番手まくりしてから)余裕はなかった。あれで4着(入線)まで沈んでいるので力不足。4車なのに申し訳なかったです。(今後は)1月に沖縄合宿があって、2月にネーションズカップがあるので、それに向けてですね」