ホームバンクで5度目のG3制覇
S級S班の新山響平、守澤太志が主軸になって、北日本4車が結束。中田健太が北日本勢の分断を表明したものの、地元の浅井康太にとっては厳しいと言わざるを得ないホームバンクでのファイナルだった。それを跳ね除けたのは心憎いまでの浅井の肝の据わった立ち回りと、タッグを組んだ嘉永泰斗の頑張り、そして息の合ったラインプレーだった。
「地元で気持ち良くみなさんに迎えられてうれしいです。最近は結果が全然出てなくて、地元で勝負っていう気持ちでした」
優勝インタビュー、浅井は開口一番、こう言って地元ファンの感謝した。
赤板過ぎに嘉永が、新山響平の上昇を阻んで主導権を渡さない。しかしながら、再度、打鐘3コーナーから巻き返してくる。競りもあって後ろは付いてこられない。嘉永も全開で合わせるが、新山の勢いが良く最終1センターで叩き切る。新山にスイッチするかに思われた浅井だったが、渡辺十夢をすくって浅井後位で息をひそめる諸橋愛との間合いを計算しながら、嘉永を迎え入れる。
「(嘉永を番手に入れた)あそこは自分としては当然かなと。優勝を狙ってくれれば、自分にもチャンスがあるって思ってましたから」
その言葉に嘘はなく、浅井の一瞬の判断が嘉永とのワンツーを生み出した。
「(最終4コーナーは)後ろに諸橋さんがいるのはわかっていましたし、内を締めてタイミングを遅らせた。(ゴール前は)必死でしたね。ずっと記念(G3)を獲れてなかったですけど、地元記念はG1と同じようなものだし強い気持ちで走れました」
新山の番手に入った嘉永も、浅井の気持ちに応えるように最後の力を振り絞って最終4コーナーから踏み込む。ギリギリまで諸橋のコースをつぶした浅井が、ホームバンクの直線で鮮やかに伸びた。内にいた嘉永を浅井がピタリと交わしたところがゴールだった。
「(優勝した時は)グランプリで優勝した時みたいに、両手でガッツポーズしようと思っていました。40(歳)手前ですが、まだまだ自分もできると思っている」
一昨年9月松阪記念以来となるグレードレース制覇。その脚とテクニックはさびつくどころか、さらに研ぎ澄まされて進化をしている。
一度は新山を突っ張った嘉永泰斗は、再度スパートした新山に出られたが、番手に入る。その浅井のプレーに応えるように、最後は新山をねじ伏せた。
「前から(新山を)突っ張って、もう1回来たところを突っ張れたら最高でした。(合わせたところは)全開だったんですけど、(番手に)入って脚がたまる感じがあった。それでもう1回行きました。3車だったし、責任のある走りを、(浅井には)付いてて良かったと思われる走りをって思ってました。ワンツーで最高の形でした」
単騎の諸橋愛は、打鐘2センターで渡辺十夢をすくって浅井後位を奪う。直線は中のコースを伸びたが3着まで。
「(嘉永が)突っ張り切れれば、ああいう風になるかなと。あとは(渡辺)十夢をどかせるかどうか。そのチャンスが来たんで、申し訳ないけどいかせてもらった。最後はもうひと伸びできれば良かった。結果を求めなきゃいけないし、優勝するには(最初から)番手勝負っていうのはなかった。自分のなかで条件がそろわなかった」