北勢の作戦がズバリと決まる
シリーズの行方を占う初日特選。新山響平が突っ張り先行で脇本雄太を不発に陥れたにもかかわらず、吉田拓矢のまくりに屈して北日本勢は全滅。同じ失敗はできない。それは、まとめ役である成田和也が一番感じていた。
「初日の失敗があって、坂井と脇本を相手に4車で結束したんで、このラインなら負けられないよねって話は新田(祐大)としました」
先頭の新山が、8番手で構えた脇本を警戒して誘導と車間を取る。打鐘目がけて踏んだ脇本に合わせて、新山は強烈なダッシュで加速する。ことごとく力でねじ伏せてきた脇本を、新山が合わせ切った。5番手に入り直した脇本がもう一度仕掛けるが、それを察知した新田は最終4コーナーで前に踏み込んだ。
「新山が落ち着いて駆けてくれて、すごい掛かりだった。(新山は)頼もしいというより、SSなんで、さすがだなって。ジャンですごいダッシュしたんで、後ろは多分口が空いてるだろうなと思って、(脇本が)後ろに入ったのは分かりました。新田が(番手から出て)いけば自分が(まくりを)なんとかしなくちゃって思ったけど、新田のスピードがあった」
新田をゴール寸前でとらえた成田の優勝。昨年は4度G1決勝の舞台に立ったが、G3優勝となると13年6月に函館記念を制してから、実に10年の月日が経っていた。
「10年っていうのは自分では分からなかったですね。でも、チャンスは十分あると思ってました。このチャンスを逃したらもうないって感じで力が入りました。優勝できて良かった」
職人気質の成田は10年ぶりの優勝にも浮かれることはないのだろう。また厳しい練習を繰り返し、激しい戦いへと身を投じる。
「一走、一走が勝負だと思ってますし、来たチャンスは逃さないようにと思ってます。練習して、レースではラインに恵まれて、その中で自分のレースの質を高めたい。それができれば、結果も付いて来ると思うので」
今年北日本のS級S班は4人。そこに加えて成田がいる。ラインの結束力を示して、層の厚さをまざまざと見せつけた。
2着の新田祐大は納得の表情でレースを振り返る。初日の失敗を糧にして、北日本上位独占を果たした。
「やっぱり新山君のスタイルもありますし、坂井(洋)君もいましたけど脇本君と戦う感じになるのかなって思っていました。新山君の調子が良かったですし。初日にミスをしてしまったので、絶対にミスをしないようにと思って。気持ちを無駄にはできないんで。新山君が全部やってくれました。4着に粘っていましたし。(脇本が5番手に入ったことが)確認できていなくて。新山君のカカリも良かったですし番手から出て行かなくてもいいなって思っていたんですけど、(脇本が)見えたので。スゲーなって。一番後ろから来ているんだったらのみ込まれてしまうなって思って前に踏んだんですけど。初日の失敗があったからこそいい形で最終日を迎えられたと思うので。(次の函館サマーナイトは)地元地区の大会なので、しっかりと北日本から優勝者をだせるように頑張ります」
北日本4番手を固めた渡部幸訓が3着に入った。
「(打鐘付近の新山のダッシュは)過去イチできつかったです。脇本さんに入られてしまうわけにはいかなかったんで。後ろに(脇本が)入ったのはわかったんで。ちょっとレベルが高すぎましたね。また脇本君が(まくりに)きたので。ちょっと(最終2センターで)バックを踏んでしまったんできつかったですね。外に東口(善朋)さんが見えて張りながら止まってくれればと思って踏みました。(競輪祭の権利を獲得して)嬉しいですね。気持ちの余裕はあったんですけど、もう少し脚力的に余裕が欲しいですね」