山口拳矢が中部の牙城を守り切る
若きダービー王の称号を引っ提げて、名実ともに地元地区のエースとして臨んだ今大会。初日特選同様に単騎で挑んだ決勝戦を、山口拳矢が持ち前のレースセンスとスピードで攻略した。
打鐘カマシの中国勢を追って、最終ホームでは3番手に飛び付いた渡邉雄太と位置がバッティング。外併走を嫌って2コーナーから仕掛けると、もうそこからはスピードが違った。
「取鳥(雄吾)さんは絶対に行くだろうけど、(渡邉)雄太さんは初日特選のこともあって(中団から)簡単には引かないだろうなと思った。引いてくれたらもっと楽だったんですけどね。外併走でも飛ばない位置にはいれたし、その辺の余裕はありました。ただ、併走から無理やり踏んだんで、きつかったです」
すでにビッグ2冠を有している山口だが、G3の優勝は2月伊東G3以来2度目。SS班を破ってのG3制覇はこれが初めてだ。名古屋バンク改修前最後の開催で、思い出の優勝を飾った。
「ちゃんとした(開設)記念をやっと獲れて嬉しいですね。自分の中で、一つの目標ではあったんで。(改修前)最後の名古屋で結果を残せて良かった。あと、27日が母の、29日が父の誕生日だったんです。まあでも、それはお客さんに言われて思い出したんですけど(笑)」
恒例となった父の幸二氏(62期・引退)とのツーショットでははにかんだ笑顔を見せた。が、G1覇者として迎えるこの先の戦いに目を向けると、真剣な表情でこう語った。
「今月がレースばっかりで、3本走ったんで、この後は(オールスターに向けて)しっかり練習します。でも、目標はオールスターっていうよりも、グランプリ。やっぱり、年末の集大成だと思うんで。正直まだ出ることが想像も付かないけど、そこを目指してやっていきたい」
デビューから2年11カ月の超スピードで初のG1ファイナルの舞台に立ち、そこでダービー制覇の離れ業をやってのけた。『グランプリも、もしかして…』。山口のスター性を見ていると、自然とそう思えてきてしまう。
取鳥雄吾は自己の仕掛けのタイミングに全集中し、打鐘からのカマシを敢行。4日間全てで先行して決勝2着と、内容の伴った好成績を残した。
「(山口)拳矢も、僕らの後ろから狙い打つと思ってたんで、(渡邉ラインには)付いていかない作戦でした。自転車が壊れるくらい踏んだんですけど、(山口に)簡単に行かれちゃいましたね。軽いバンクだと持ち味が出せるし、桑原(大志)さんがノビノビ走らせてくれるおかげです」
取鳥マークの桑原大志が3着。
「山口君が後ろにいるのは分かったんで、良くないなと思ってたら、やっぱり来ますよね。何もできなかった。コーナーの出口で脚力差のある人に来られた時が今後の課題だと思います。抜きに行ったけど、(取鳥)雄吾の踏み直しがすごかった。悔しいけど、2人で確定板に乗れたのはなによりです」