史上6人目の年間3度のG1V
ゴール後は両者を上げてガッツポーズ。最終日にしてようやく納得のパフォーマンスにたどり着いた古性優作が、惜しむことなく喜びを表現した。
「(3日目までは)たまたま1着が取れている状態で、感触も良くなかった。決勝は本当にすごく良かった」
初日の「理事長杯」、2日目の「ローズカップ」を含めた3連勝。決勝も当然、人気に推された古性だったが、おごりは微塵もなかった。
「もしかしたら(周回中の位置も)一番後ろになるかと思ったんで、あそこ(4番手)が取れるとは思わなかった。犬伏(湧也)君が来なかったのも想定外だったし、想定外のことが多かった」
3車の福島勢が前団を占めて、古性は中団からレースを進める。単騎の河端朋之は9番手で、7番手の犬伏は赤板を迎えても動かない。一瞬の判断が明暗を分ける闘いにも、冷静さを欠くことはなかった。
「犬伏君と小松崎(大地)さんを見て、あとは自分がどういう判断をするか。最初に切る予定でしたけど、レースは生きものなんで。その時の瞬時の判断でああなったと思います」
大方の予想では主導権を取ると思われた犬伏が後方で動かない。打鐘2センターでようやく犬伏が仕掛けるも、タッグを組んだ諸橋愛は付け切れない。一度は見送った犬伏が大きく外に膨れてスピードが鈍ると、古性は2コーナーから犬伏の内を踏み込んだ。
「4日間のなかでは一番冷静に走れたし、一番(感触が)良かった。踏み出す前に周回中から感触が良かった。これならいい感じで踏めるかなと思った」
決勝前のウォーミングアップから、3日目までとは違う手ごたえがあった。それは前回の熊本記念のあとに受けた村上義弘さん(京都・73期、引退)の助言だった。
「久留米(熊本記念)の時はどうしようもなくて、村上義弘さんにアドバイスをいただいた。そのことが自分のなかでハッときて、今日のレースとかも自分なりにそれができたかなと。(連日)もっと良くなるようにやってきたなかで、決勝のアップの時は乗り方を思い出したって感じで、周回中からこれイケるかもしれへんなっていう感じだった」
山降ろしで再び踏み込む犬伏が降りてきて、コースが狭くなったが古性はひるむことはなかった。合わせれた犬伏は外に浮いて後退。佐藤慎太郎の仕事を許さずに、瞬く間に前団をまくり切って優勝を遂げた。
「年間でいまのところ(5つのG1で)全部決勝に乗れて、3つ獲れた。今年最初はそんなにできると思ってなかったんで、ちょっとビックリしています」
すでにグランプリ出場権は2月に手に入れているが、獲得賞金も大きく上積みして2億1600万円超。賞金トップを独走して、年間レコードが視野に入るところまできている。また、2月の全日本選抜、6月の高松宮記念杯に次いで今年3度目のG1制覇で、年間3回のG1優勝は史上6人目。11月の競輪祭を残しているだけに、前人未到の年間4Vの記録も現実味を帯びてくる。
「史上最高額も目指したい。(年間G1優勝記録も)したいですね。(G1を)1回優勝してまったく満足してない。満足してないなりの結果が出せていると思いますし、今日優勝できたけどまったく満足してない。この気持ちがあったらまだまだ戦えるかなと思います。満足したら、そこで終わりなんで。いままでと一緒じゃダメなんで、もっともっと高いところを目指してやっている。もっともっと脚力もそうですし、ヨコの動きも、精神的にも強くないとダメですし。本当に強くないと、自分の目指しているところまでいけない」
究極の理想形を追い求めて、古性はこれからも慢心するこなく自身を高みに引きあげていく。
先行策の小松崎の番手で佐藤慎太郎は、最終2センターで南修二をブロック。もつれた2人のあおりを受けて接触した和田健太郎が落車に見舞われる。結果的には南をさばいて審議対象にはなったが、セーフ判定の佐藤が離れた2着に入った。
「小松崎大地は、本当にいい走りをしてくれた。犬伏のまくりが見えて、どう止めようかと思っていた。その時に古性も来て、対応ができなかった。苦しまぎれに(南)修二のところにいったが対応しきれなかった。自分としては最善のことはできたかな。小松崎大地がいい選手だというのを再確認できた。俺も勝ちたいけど、大地には獲って欲しい。(年末のグランプリへ)賞金の上積みができました」
福島3番手を固めた渡部幸訓は、内を締めて直線まではじっと我慢。アクシデントもあったが、G1初ファイナルで初めて表彰台にあがった。
「内を締めておくのが3番手の仕事。3番手を固めさせてもらって、その仕事をこなせるようになってきたという実感がある。今開催はラインのおかげだし、自力選手の頑張りで恵まれました。(佐藤)慎太郎さんに食らいついていたので、3着というのはわからなかった。初のG1決勝で表彰台はデキすぎですね。競輪人生で(G1決勝に乗れて)満足していたところもあるが、ラインのおかげです。自分の力よりもラインの力。(今後は)初心に返って一戦、一戦、コツコツやっていきたい」